楽天時代のオコエ瑠偉
楽天時代のオコエ瑠偉

 昨年初めて行われた現役ドラフト。野手では早くもキャリアハイの安打数を更新した細川成也(DeNA→中日)と並んで大きな戦力となっているのがオコエ瑠偉(楽天巨人)だ。ここ数試合はスタメンから外れているものの、4月は外野の一角に定着して20試合に出場して21安打、2本塁打、6打点、打率.269という成績を残し、守備でもチームに大きく貢献しているのだ。楽天時代の最高成績は2017年の39安打であり、このペースであれば早々にこれを上回る可能性も高いだろう。近年はグラウンド以外での話題が多かったが、移籍によって改めて能力の高さを証明したと言える。

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 その一方で気になるのがオコエを放出した側の楽天だ。過去10年間にドラフト1位で入団した選手を改めて振り返ってみると、完全にチームの主力となっているのは松井裕樹と小深田大翔だけ。安楽智大は中継ぎで戦力になっているが入団時に期待されていた将来のエースという姿ではない。またセンターのレギュラーに定着したかに見えた辰己涼介も今年は苦戦を強いられている。

 2位指名まで対象を広げても、ともに捕手の太田光と安田悠馬くらいしか一軍の戦力になっている選手は見当たらない。3年目の早川隆久やルーキーの荘司康誠など今後エース格への成長が期待される選手がいるのは救いだが、ここまで上位指名の選手が苦戦している球団は他にはないだろう。

 そして気になるのがオコエ以外にもチームを離れてから開花している選手がいるという点だ。2014年2位の小野郁は2019年オフに鈴木大地の人的補償でロッテに移籍。その後は3年連続で40試合以上に登板するなど、チームのブルペンに欠かせない存在となっている。また2016年2位の池田隆英も楽天での4年間で一軍の試合で登板したのは2018年の15試合(1勝5敗、防御率5.91)だけだったが、トレードで日本ハムに移籍すると1年目から大きく負け越したものの(3勝10敗)、82回1/3に登板して一軍の戦力になっている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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