「新型コロナで一番困っていたときに、日Pは何もしてくれなかった。都小Pからすれば、何も動いてないように見えました」

 緊急事態宣言が発出され、街角から人影が消えると、各校のPTAはどう活動を続けていくのか、難しい決断に迫られた。活動の場であった校舎への立ち入りは厳しく制限された。当時、感染者に対する誹謗中傷は激しく、PTA活動によって感染者が出れば、地域を巻き込んだ大問題になりかねなかった。

 都小Pは、PTAがオンラインで活動しやすいように利用料の半額補助を行った。さらに手ごろな価格でポケットWi-Fiルーターのレンタルプランの提供も行った。

「こういうことを日Pが企画してくれれば、もっと多くの数をまとめられ、さらに大きなメリットを提供できたはずです」

 Office365やGoogle Workspaceのサービスも無料で利用できるようにした。

「PTAがサービスを活用しやすいように、セミナーを開催して、使い方を教えたりもした。そんなことを都小Pはこの3年間ずっとやってきた。活動の方向性の違いというのはそういうことです。このような実情をふまえて、議論を繰り返し、最終的に日Pを退会するという結論にいたりました」

会員制度を廃止 

 さらに、都小Pは日Pから退会しただけではない。驚くことに会員制度も廃止したのだ。これによって会費収入もなくなる。

佐瀬副会長は会員制度廃止に踏み切った理由について、こう説明する。

「これまでは都小Pの会員校と非会員校で提供サービスに差をつけていました。つまり会費をいただいている学校と、そうでない学校では、差をつけざるを得なかった。しかし、ぼくらは『東京都小学校PTA協議会』を名乗る以上、東京都のすべての公立小学校PTAを平等に支援していきたいと、ずっと思っていました」

 ちなみに、東京都内の公立小学校1265校(22年4月1日)のうち、都小Pの会員校は190校、全体のわずか15%にすぎない。これまで年間約90万円(日Pへの支払いぶんは除く)の会費収入があったが、その減少ぶんはどう補うのか?

「ホームページに掲載した決算書を見てもらえばわかりますが、12年に都小Pを一般社団法人化するにあたって必要だった資産が約3千万円あります。なので、仮に収入が毎年100万円マイナスだったとしても、30年間は活動できる。ぼくら役員はもうそれくらいの覚悟で活動の方向転換をしている最中なんです」

 前述のとおり、この3年間、都小Pは会員校を増やそうとオンラインでのサービスを使いやすくするなど、さまざまな努力をしてきた。

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都内のPTAと向き合うことが最優先