老朽化し、誰も住まなくなったマンション。行
政代執行により取り壊しが進んだ(写真は工事
前)=2019年9月、滋賀県野洲市
老朽化し、誰も住まなくなったマンション。行 政代執行により取り壊しが進んだ(写真は工事 前)=2019年9月、滋賀県野洲市

 築年数の古い小規模なマンションは、修繕積立金が足りず、管理も行き届かないことが多いという。行きつく先は、設備が老朽化して廃虚のようになり「スラム化」したマンションだ。もしあなたのマンションがそうなったら……。マンションを「スラム化」させないためには何をすべきなのか。(朝日新書『朽ちるマンション 老いる住民』から一部抜粋)

【表】管理不全の兆候のあるマンションの割合はこちら

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■雨漏りでも修繕費がない ――「スラム化」の懸念

「屋上から下の部屋に雨漏りしている」

 神奈川県大和市内のマンションの管理組合の会計業務を担う会社に、住民から連絡があったのは、5年ほど前のことだ。マンションは全部で9戸、築40年以上経つ。

 修理の見積もりをとると高額だったため、住民の意向もあり、簡単な修理にとどめた。その数年後の台風で屋根が飛び、雨漏りはさらに拡大。だが、修繕積立金が足りず、仮の補修しかできなかった。排水管の修理もできていない。

 状況は2021年秋、さらに悪化した。

 理事長と会計責任者の2人が体調不良などを理由に退任。会計責任者が入院したため引き継ぎができず、組合から修理業者への修繕費などの支払いが滞るようになった。管理会社への委託費用の捻出も難しい。

 もともと修繕計画はなく、積立金が足りないため、修理すべきところもできていない。積立金の滞納者が1人いるほか、全体の戸数が少なく、少額しか集まらないことも背景にある。

 70代の前理事長は「資金もなく、住民の多くも管理は人任せ。計画的に修繕するのは難しく、問題が大きくなってから対処するしかできない」と漏らす。

 なぜ、こんな状況に陥ってしまったのか。

■廃墟マンション、今後は大きな問題に?

 10年ほど、このマンションの管理組合の会計事務の代行業務を担ってきた「横浜サンユー」(横浜)の利根宏社長は、管理不全になった理由として、住民の管理意識の低さをあげる。

 9戸のうち、5戸の所有者は居住しておらず、総会などにもほぼ参加していない。残りの4戸の所有者も、高齢なことなどもあり、積極的に管理に関わることが難しいという。

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小規模マンションに顕著な「スラム化」