過剰な筋トレは心血管疾患やがんのリスクにもなる。画像はイメージ(GettyImages)
過剰な筋トレは心血管疾患やがんのリスクにもなる。画像はイメージ(GettyImages)

 4月15日、バラエティー番組に落語家の月亭方正さんが出演し、ダウンタウンの松本人志さんが、過去に筋トレをやりすぎて医師から止められたというエピソードを披露して話題となった。たゆまぬ筋トレでたくましい大胸筋をつくり上げた松本さんも、59歳と決して若くはない。どんな筋トレが、やりすぎに当たるのか。筋トレをするうえで、年齢とトレーニング強度をどう考えていけばいいのか。専門家にノウハウを聞いた。

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「トレーニングのやりすぎとは、2通りあると考えられます」

 そう切り出すのは、日本体育大学教授で現役ボディービルダーの岡田隆さん(43)。「バズーカ岡田」の名前でメディアでも取り上げられる、筋肉や体づくりの専門家である。

 岡田さんが“やりすぎ”と指摘する一つ目は、「体が痛いのに筋トレをしてしまうこと」だ。

 痛みとは、トレーニングによって生じる筋肉痛のことではない。関節や腱などが痛いことを自覚していながら、トレーニングをしてしまう人がいることが問題だという。

「体作りにおけるプロのボディービルダーでもやりがちなのですが、大会が近づくと体のどこかが痛いのにもかかわらず、高い負荷をかけてしまう。これを繰り返していくと痛みが慢性化し、日常生活に支障が出たり、疲労が抜けきらない状態が続いたりしてしまい、いいことがありません」

 二つ目は「効果が少ないトレーニングをがんばりすぎること」である。

 一例を挙げると、知識が浅いまま「たくましい大胸筋が欲しい」と考え、毎日、ベンチプレスに励んでしまう人がいる。1日に何度も行う例すらある。

「トレーニングによる筋力増強や筋肥大は、やればやるほど効果があるというものではないんです。朝も夜もベンチプレスをやると筋肉の反応は悪くなりますので、さすがにやりすぎだと言えます」

 一般的な筋トレ愛好家のトレーニング量では考えづらいが、1カ所の筋肉だけを極端に鍛えると体のバランスが崩れて、例えば腕が上がりにくくなるなど、何らかの不調につながることもあり得る。基本は、全身をバランス良く鍛えることだ。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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年を取ったから負荷を下げる、という必要はない