松村宗亮さんは、胸元にスワロフスキーが輝く着物姿で登場。この写真では大部分が隠れているが、茶釜は地球儀を模していて、緯線や経線、大陸の形が刻まれている
松村宗亮さんは、胸元にスワロフスキーが輝く着物姿で登場。この写真では大部分が隠れているが、茶釜は地球儀を模していて、緯線や経線、大陸の形が刻まれている

 裏千家茶道準教授で、茶道教室SHUHALLY代表として茶道の魅力を伝え続ける松村宗亮さんが、4月20日、初の著書『人生を豊かにする あたらしい茶道』の出版を記念して、トークショー&お茶会を開いた。会場となった代官山蔦屋書店(東京都渋谷区)には、黒い畳と花々でしつらえた「茶室」が出現。定員を超えて集まった37人の参加者が、「あたらしい茶道」を体感した。

【写真】黒い畳に初夏の茶花 書店にしつらえた「茶室」はこちら

 松村さんは、英国国立ウェールズ大学大学院で経営学修士(MBA)を取得しているほか、茶道の解説や抹茶味のコンビニスイーツ食べ比べなどの動画をYouTubeで配信するなど、異色の茶道家として注目される人物だ。イベントは、黒い畳の周囲を初夏の到来を告げる花菖蒲が取り囲む特設の「茶室」で、松村さん流「お点前」のパフォーマンスからスタート。東京のど真ん中、しかも書店の中とは思えない空気感の中で濃茶を点て、現代アーティスト金里有氏による卵型のオブジェの上に天目茶碗をそっと置かれると、人々は一気に茶道の世界に引き込まれた。

代官山蔦屋書店のイベントスペースにしつらえた「茶室」には、花菖蒲。季節感を大切にする茶花では、実際の時期よりも少し早めに季節を告げる「走り」の花が好まれる
代官山蔦屋書店のイベントスペースにしつらえた「茶室」には、花菖蒲。季節感を大切にする茶花では、実際の時期よりも少し早めに季節を告げる「走り」の花が好まれる

 学生時代にヨーロッパを放浪中、日本人でありながら日本文化を知らないことに気づいたことがきっかけで、茶道を始めたという松村さん。自身の教室を開いてからは、茶道の世界のありように戸惑うこともあったという。例えば、茶道教室にはあって当たり前の茶道具の数々。お茶の世界では「3代目でないとなかなか揃わない」とされるが、親や親せきに茶道をたしなむ人は誰もいなかったという松村さんは、伝統や格式のあるものを少しずつ集める一方で、自分と同世代の若い作家たちに声をかけ、これまでにない素材や造形の茶道具を揃えていったという。

「千利休が竹という新しいマテリアルを取り入れて花入れを作ったように、新しいクリエイティブを追い求めることはお茶の原点」と松村さん。こうしたチャレンジが少しずつ、松村さんの「あたらしい茶道」を形作っていった。

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これだけは守りたいもの