個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、50代で振り返る下積み時代について。
* * *
現在、とある映画の撮影真っ只中です。
まだまだ情報解禁は先の話ゆえ、詳しくは書けませんが、この現場に、僕は初めてご一緒する市村正親さんがいらっしゃいます。
本当にビックリするくらい、底抜けに明るく、若々しく、1ミリたりとも偉ぶる感じがなく、とてもとても話しやすい。
あまりに明るく、テンション高く、若々しいので、思わず僕が「い、市村さん、一体おいくつなんですか?」と聞いたところ、「74ちゃいです!」と元気にお答えになってました。
僕は「精神年齢6歳の53歳児」を標榜しており、精神年齢の低さには定評(?)があるつもりなんですが、なんというか、年季が違う。僕も妻のことを「お母たぬ」と呼んだりしてますが、同じ幼児言葉でも市村さんが使うと、なんかこう、重みが違う。幼児言葉の重みってなんだという気もしますが、とにかく話し相手に肩肘張らせないというか、とてもとても楽しい人なんです。
なんかこの人ともっと話をしたいと思い、撮影の空き時間にいろんなお話をお聞きしました。
西村晃さんの付き人だった時代のこと、劇団四季に入り立ての時代のこと、20代の無鉄砲で怖いもの知らずでお金がなかった時代のこと、これらの時代の経験が市村さんにとってかけがえのない宝物になっていること……。
そこに、こちらも敬愛する先輩、堤幸彦さんも入り(堤さんもAD時代、とことんお金がない下積み生活を経験している)、さらに僕も「暗黒の20代」とよく言ってるくらいなので、市村さん、堤さん、僕の3人で、70代、60代、50代の下積み話にしばし花が咲きました。
もちろん下積み話をウェットに美談化する感じは微塵もなく、ひたすら明るく楽しくゲラゲラ笑いながら話して、ほんの短い時間でしたが、敬愛する2人の先輩と得難い時間を過ごせました。