キャンパスの象徴的な教会 Memorial Churchの周りは教室やオフィスで、雲を書き忘れた絵のような青空は「できるよ感」を漂わせる
キャンパスの象徴的な教会 Memorial Churchの周りは教室やオフィスで、雲を書き忘れた絵のような青空は「できるよ感」を漂わせる

 なぜ、スタンフォードは常にイノベーションを生み出すことができ、それが起業や社会変革につながっているのか? 書籍『未来を創造するスタンフォードのマインドセット イノベーション&社会変革の新実装』では、スタンフォード大学で学び、現在さまざまな最前線で活躍する21人が未来を語っている。本書より、カーネギー国際平和財団シニアフェローの櫛田健児がスタンフォードで学んだことについて、一部抜粋・再編し前後編でお届けする。

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■今の日本に必要な外の刺激を得る機会

 著者が伝えたい一番のメッセージは、パンデミックでしばらく鎖国状態となってしまった日本に対して、「外の刺激を得る機会」を求めることの大切さである。これから日本が抱える数多くの課題に向き合い、新しい価値を作り出すには、「アウェー環境」で猛烈に刺激を受け、新しいことや、今とはまるで異なる世界観や人脈を作って次につなげていくことが必要だと考えている。

 スタンフォードはトップ大学としての世界の人材の良いところ取りの好循環と、シリコンバレーの中枢としてエコシステムと補完する関係の好循環という二つの好循環に恵まれていて、特に刺激的で転換点になりやすい。他のところがスタンフォードの仕組みや取り組みだけをまねしても、エコシステムの中心にいなければ、本書で述べられているようなエリック・シュミットから直接話を聞いて刺激される体験や、ピーター・ティール本人との会話で背中を押されるような経験はなかなかできないし、ここまで刺激的なクラスメイトや同僚に会えるとは限らない。

 同時に、エコシステムの中心にいる恩恵があるからこそ、もしかしたらスタンフォードが大学として抱える問題が見えなくなったり、もしかしたら制度や取り組みが世界一でなくても、人材と資金の流れがあるから結果として大成功したりしている側面もあるかもしれない。

 スタンフォードは、企業派遣の客員研究員の制度なども含めると、なんらかの形で携わることのハードルは、多くの人が考えているほど高くない。デザイン思考の企業向けブートキャンプや、さまざまな企業研修に取り入れられる要素もあれば、個別の教授や研究者を招いて話を聞いたり、研修を受けたりすることも可能である。

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「外に身を置く」のはスタンフォードでなくてもいい