エンゼルスの大谷翔平(写真:AP/アフロ)
エンゼルスの大谷翔平(写真:AP/アフロ)

 投打の二刀流でメジャーでもトップアスリートとして活躍するエンゼルスの大谷翔平。WBCでは侍ジャパンを世界一に導く活躍で、日本列島を熱気の渦に巻き込んだ。その人気は日本国内だけにとどまらない。米国でもメジャーリーグの広告塔として大きく扱われ、アジアでも抜群の人気を誇る。なぜ、大谷は万人に愛される存在なのか――。公認心理師で社会心理学に精通する株式会社ダイレクトコミュニケーション代表取締役・川島達史氏に話を聞いた。

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――WBCでは先発登板した準々決勝・イタリア戦で1球ごとに雄たけびをあげたり、準決勝・メキシコ戦で1点を追う9回に二塁打を放った際にヘルメットを脱ぎ捨てて、塁上で両手を何度も突き上げてナインを鼓舞するなど、感情を前面に出す姿が印象的でした。

喜怒哀楽を出すことは自己開示を大っぴらにしているので、秘密ごとがない、裏表がないという印象を抱かれます。すごい成績を残す選手は無条件に人気が出る側面はあります。同じ日本人が世界で活躍すると、誇らしく感じる。政治、経済で日本国内に閉塞感が漂い、心が乾いている中で、現れたヒーローが大谷選手だと思います。その存在が癒やしになって、日本人の自尊心を高めている部分があると思います。

――エンゼルスでチームに溶け込んでいる姿が印象的です。

非言語の部分で雰囲気が非常に柔らかいと感じます。笑顔でいつも楽しみ、ベンチでチームメートとじゃれ合ったりするなどちゃめっ気もある。1987年に米国の言語学者ペネロペ・ブラウンと、英国の社会科学者スティーヴン・レビンソンが提唱した『ポライトネス理論』という理論があり、良好な人間関係を築くための言語行動を指します。丁寧な言葉遣いで礼儀正しいことは大事なのですが、上下関係を求めて丁寧になりすぎると心理的距離がなかなか縮まりません。日本の野球部は上下関係が厳しい傾向がありますが、大谷選手は侍ジャパンで後輩の選手に『タメ口で話していい』と伝えたという記事を読みました。これが事実なら、心理的距離を縮めるのが非常にうまいと感じました。丁寧になりすぎないように配慮して、ファーストネームやニックネームで呼ぶことでも心の距離が近づきます。

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