取り押さえられる木村容疑者
取り押さえられる木村容疑者

 岸田文雄首相に爆発物を投げつけ、威力業務妨害の疑いで逮捕、送検された木村隆二容疑者。現在、和歌山県警が取り調べているが、黙秘を続けているという。なぜ、現役の首相を狙うという“テロ行為”に及んだのか。謎を解く鍵になるかもしれないのが、木村容疑者が昨年、国を相手取って起こした裁判だ。判決文には木村容疑者の選挙制度に対する主張や不満などが書かれていた。

 AERAdot.が入手した一審の判決文などによると、木村容疑者は、昨年7月の参院選に立候補しようとしたが、当時23歳で被選挙権(30歳以上)はなく、供託金の300万円もないため、立候補できなかったとして、国に損害賠償を求め、弁護士をつけない本人訴訟で神戸地裁に提訴した。

 木村容疑者は、「公職選挙法で参院議員の被選挙権を30歳以上とし、供託金を収めなければならないと定めているのは憲法違反で、国会議員がそれを是正する措置を怠ったことは国家賠償法上、違法」などと主張。このため「選挙に立候補することができず、精神的苦痛を受けた」として、国に10万円の損害賠償を求めている。

 木村容疑者の訴えの詳細を見ると、

「公選法の規定は、合理的理由なく成年の被選挙権を侵害するもの」

「30歳未満の成年が、30歳以上の成年と同じ『大人』であるにもかかわらず、参院選の被選挙権がないのは、社会経験に基づく思慮が十分ではないことなどを理由とした差別である」

「供託金の制度は、立候補の自由を保障し、候補者資格の『財産又は収入』による差別を禁じる憲法に違反する」

「供託金制度には合理的な理由がない」

 などとして、選挙に立候補できなかったことによって受けた精神的損害への慰謝料として10万円を求めた。

 木村容疑者の訴えに対し、神戸地裁は昨年11月、「憲法に違反はしていない」、被選挙権、供託金とも「合理性がある」などと指摘し、木村容疑者の訴えを棄却する判決を言い渡した。木村容疑者は現在、大阪高裁に控訴中で、控訴審の裁判資料には「旧統一教会の組織票で当選した議員は問題」「岸田首相は世論の反対を押し切って閣議決定のみで安倍元首相の国葬をやった」と言った文言が出ている。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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