爆発物事件があった翌日、大分市の演説会場に到着し、手を振る岸田文雄首相
爆発物事件があった翌日、大分市の演説会場に到着し、手を振る岸田文雄首相

 和歌山県の選挙演説会場で、岸田文雄首相に爆発物が投げ込まれるというショッキングな事件が起きた。しかし、岸田首相はその日、何事もなかったかのようにその後の応援スケジュールをこなし、散髪もするマイペースぶり。岸田首相の胸の内はいかに? 統一地方選が始まってからの動きを振り返りつつ、岸田首相の思惑について政治ジャーナリストの安積明子さんが分析した。

【写真】取り押さえられた直後の木村隆二容疑者、落ちた銀色の筒はこちら

 *  *  *

 岸田文雄首相はいよいよ解散・総選挙の腹を決めたのかもしれない。衆参の補欠選挙で、4月15日には衆院の和歌山1区と千葉5区、16日には参院大分選挙区に入り、自民党候補のテコ入れをした。

 体調不良のために岸信夫前防衛相が議員辞職した山口2区と、昨年の参院選の最中に銃弾に倒れた安倍晋三元首相の弔い合戦といえる山口4区の補選では、自民党が優位と判断したのか、入らなかった。

 だが、過去4回の衆院選で、岸本周平氏(現、和歌山県知事)が自民党候補の門博文氏を破ってきた和歌山1区や、政治資金規正法違反事件で薗浦健太郎氏が辞職した千葉5区では、野党が勢いを付けて接戦となっている。

 これまでは、「首相は負け戦の選挙区に入ることはない」というのがいわゆる慣例となっていた。たとえば2014年の滋賀県知事選では、外遊していた安倍首相(当時)が関西空港を経由して自民党と公明党が推薦した小鑓隆史候補(現、参院議員)の応援に駆け付けようとしたが、小鑓氏が劣勢だったために中止した。

 にもかかわらず、岸田首相があえて苦戦の選挙区に挑むのは、「自分が入れば勝利できる」という自信に加え、自民党大阪府連が支援しながらも惨敗した大阪府知事選・同市長選でそのタブーが破られたことだろう。

 岸田首相は3月26日にあった自身の関西後援会の会合で、大阪府知事選・同市長選にそれぞれ出馬した谷口真由美氏と、北野妙子氏の手を取って勝利を訴えた。しかし、結果はいずれも維新の候補に惨敗。ちなみに、谷口氏は吉村洋文氏の18%、北野氏は当選した横山英幸氏の41%の得票しかできなかった。

著者プロフィールを見る
安積明子

安積明子

■あづみ・あきこ/兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。

安積明子の記事一覧はこちら
次のページ
立憲議員「うちは女性層にウケがいい」