中学受験をするか迷っているご家庭も、やると決めたご家庭も、悩みはつきもの。『勇者たちの中学受験』が反響を呼んでいるおおたとしまささんに、ズバリ「『なぜ』中学受験をするのか」について語っていただきました。発売中の「AERA with Kids 2023年春号」(朝日新聞出版)からお届けします。

MENU ■答えが「外」にあるかのように思ってしまう ■笑顔で終わる受験はどういうものか考える  ■親は子どもに知恵を授ける存在になろう

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■答えが「外」にあるかのように思ってしまう

 僕は2021年に『なぜ中学受験するのか?』という本を出版しましたが、執筆しようと考えた理由に、メディアの中学受験の描き方が雑だな、と思ったことがあります。「メリット、デメリットはなんですか」と聞かれることが多く、「なぜ教育を損得勘定で考えるのだろう」という気持ちがありました。

 そして、これもメディアがあおっている結果ではありますが、親御さんたちも「なぜ」の答えを自分の外側に求めてしまっている。自分の価値観はさておき、「中学受験はしたほうがいい?」「しないほうがいい?」と、まるで外に正解があるかのように考えてしまう。「自分の中に答えを見つけられない」ということは、言い換えれば人間の中身が空虚になっているということ。子育て全般に言えることですが、「自分の中に答えを求めてほしい」というメッセージを込めたつもりです。

 この20年ほど、日本経済の閉塞感があり、親自身が不安を大きくしている。社会の閉塞感が教育熱に投影されている、と感じます。「なぜ受験をするのか」という問いに対し、「子どもがしたいと言ったから」と答える親御さんがいますが、とても危険なことだと思います。10歳に満たない子どもが本当に100%自分の意思だけで受験をしたいと言い出すとは思えません。子どもの価値観は当然ながら、無自覚のうちに親の影響を受けているからです。それに、親御さんが同意しているからこそ中学受験をさせているわけですよね。それなのに、“子どもの意思”だとしておけば、親は「なぜ中学受験するのか?」を自分に問わなくてすんでしまいます。それが危険なのです。

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古谷ゆう子
古谷ゆう子

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