「アホとの戦いは、時間の無駄」

そう唱えるのは、元政治家であり、現在はシンガポール・リークアンユー政治大学院で教鞭を執る田村耕太郎氏だ。

田村氏はシリーズ80万部突破のベストセラー『頭に来てもアホとは戦うな!』のなかで、アホと向き合う上での処世術を伝えている。アホをいなすための最適解は、やり返すのではなく「やられたフリ」。同書から一部を抜粋して解説する。

*  *  *

私の見てきた成功者は、皆空手より合気道である。正面からの力のぶつかり合いではなく、相手の力を使って相手のバランスを崩し、こちらの有利な体勢に持っていく。そしてお互い怪我をしないよう決着させる。

呼吸を図り、相手の力に逆らわずそれを活かすので、こちらはそんなに筋肉隆々にまで鍛える必要はない。相手がいくら巨大で強力でも、少しポイントをずらせば、こちらがコントロールできるそのコツを知っている。

世界のいかなる護身術でも体力で勝る相手から自分の身を守るためにやるべきことは、相手のその力を利用することだ。相手の力と衝突するのではなく、相手の力がかかっているほうにこちらも力をかけて、相手の力で相手のバランスを崩すのだ。倍返ししたいなら、現実社会でやるべきは、“この合気道で勝負”だと思う。

まず頭に来たら、相手に花を持たせて、いい気分になってもらうのだ。アホはアホゆえに皆に好かれておらず、その事実に薄々気づいている。そんな現実にめげないくらい彼らの面の皮は厚いが、人間誰しも人に好かれたい、人に認められたいという欲望は持つ。頭に来た人間にこそ、笑顔ですり寄って物事を頼んでみよう。頭に来ることがあっても、権力がある人材ほど、まずは花を持たせてあげよう。

そのためには相手の攻撃やいじめにやられているフリをすればいい。反撃をするガッツなど微塵も見せず、敵わなくて悔しいが“やられた”“勝てません”という姿を見せるのだ。ダメ元で結構。

ライバルへの仕返しは、相手の力を利用してこちらにメリットがあることを実現してしまうようにしたほうが建設的だ。

次のページ
アホにも頭を下げるワケ