今季は三原舞依にとって飛躍のシーズンとなった
今季は三原舞依にとって飛躍のシーズンとなった

「17歳の時に(世界選手権に)出た時よりも、もっと経験がたくさんあると思うので。今まで経験してきたたくさんのことをしっかり込めながら、私の人生を表したショートということもあって、『いろいろな経験をここで出し切る』と考えています」

【写真】「ありがとうー!」ラブリーなハートマークで客席に応える三原

 世界選手権開幕前日、公式練習後にそう語る三原舞依の髪は、少し赤みがかっていた。フリーで表現する情熱を表しているのだという。

 2018年平昌、2022年北京と、二度にわたり五輪への代表入りを惜しいところで逃したことも含め、三原は様々な困難を乗り越えてきた。そして今季ようやく実力を発揮、グランプリファイナル優勝という大きな花を咲かせている。さいたまスーパーアリーナで開催される世界選手権にも、三原はメダル獲得を期待される立場で臨んでいた。

 デヴィッド・ウィルソン氏が振り付けたショート『戦場のメリークリスマス』で、三原は難病や体調不良に見舞われながらもひたむきにスケートと向き合ってきた人生を表現している。世界選手権でも透明感のある滑りを披露し、観客を魅了した。コンビネーションのセカンドジャンプが4分の1回転不足と判定されたものの大きなミスはなく、3位発進となる。

「『今までの人生を込めて滑ってね』と(ウイルソン氏に)言っていただいた時から何回も滑ってきて、今日が一番、マックス心を込め切れたかな。最後ウルウルしながら、本当に感謝の思いを込められたかなと思います」

 テレビ向けの取材エリアで演技を振り返った三原がペン記者向けのエリアに移動する時、演技を開始しようとするチームメイトの坂本花織がモニターに映し出されていた。三原のつぶやきが聞こえる。

「かおちゃん頑張れ、かおちゃん頑張れ」

「プログラムの中で強い女性を演じられたら」と語っていたフリーだが、三原の滑りは少し弱々しく見えた。予定構成表では2本目のジャンプ・3回転ルッツにつける予定だった3回転トウループを、冒頭のダブルアクセルにつける構成に変えている。

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「心配させないようなスケーターに…」