2013年のデビュー作品『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)以来、子どもの目線でユニークかつ、哲学的な発想でさまざまなテーマを描く絵本作家、ヨシタケシンスケさん。最新刊の『ぼくはいったい どこにいるんだ』(同)では、頭の中や心の整理術として、絵や文字で「かいてみる」ことをすすめます。絵本作家として10年という節目の年、新刊にこめた思いやヨシタケさんの描く絵本づくりの「ルール」を聞きました。

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自分自身のさまざまな気持ちと向き合う、大人気の「発想絵本シリーズ」(ブロンズ新社)は、11ヵ国語に翻訳出版されている。『ぼくはいったい どこにいるんだ』はシリーズ5作め。   撮影/高橋奈緒(写真映像部) 
自分自身のさまざまな気持ちと向き合う、大人気の「発想絵本シリーズ」(ブロンズ新社)は、11ヵ国語に翻訳出版されている。『ぼくはいったい どこにいるんだ』はシリーズ5作め。   撮影/高橋奈緒(写真映像部) 

■大人でも子どもでも「一生つきまとうであろう悩み」をテーマに

 デビュー作の『りんごかもしれない』は、固定観念を疑ってみることをテーマにしました。『このあと どうしちゃおう』(同)では、人間って死んだあとはどうなるの?といった死生観について考えています。

『ころべばいいのに』(同)では、自分が「嫌いだ、苦手だ」と思う人への対処法を描いたのですが、これは僕の実生活がモチーフになっています。誰でも、苦手な人っていますよね。それに対して「そんなの、気にしなければいいんだよ」と言う人もいますが、気にしなくて済むなら、この本は描きませんでした(笑)。「それができないから困ってるんじゃないか!」という、楽観的な人に対するいら立ちもこめています。

 本のテーマを選ぶとき、僕は「そのテーマが、子どもにとっても大人にとっても切実な問題であるかどうか」ということをとても大切にしています。ですから、僕の本は子どもから大人まで、幅広く読んでいただけているのかもしれません。人間関係だったり、自分の理想と現実との乖離だったり、子どもも大人も実は悩みごとってあまり変わりませんよね。

 人間には、要領のいいタイプとそうでないタイプとあります。僕は、要領のいい人間を後ろから見て、「憎たらしい」と思うタイプ(笑)。「もっと要領よくやったら?」なんて言われても、「そう言われてもねえ」と「悔しさ」からは逃れられないわけです。

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三宅智佳
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