「コロナ禍になり、直接顔を合わせて伝えることが困難な中で、地域の循環器内科医から紹介があれば、その返信文書で自分たちがおこなった治療内容を丁寧に伝えたり、地域の核となる病院の循環器内科とオンラインでのカンファレンスを定期的に開いたりと、地域との連携を進めてきました」(高梨医師)

 それらの取り組みにより、紹介患者数が増加し、紹介元の地域も広範になったといいます。近隣の地域に加え、現在では診療圏外の大学病院や循環器専門医から、難度の高い手術を依頼されることも増えています。

 患者にとって最善の治療法を検討するために、心臓病センターでは多くのカンファレンスがおこなわれます。週1回の心臓病センター全体でのカンファレンスのほか、手術が必要な患者に対する心臓外科と循環器内科、手術室、検査室の医師やスタッフによるカンファレンスも週1回あります。さらに、毎日の手術前にも心臓外科医と循環器内科医、手術室のスタッフで最終的なチェックをしてから手術に臨んでいます。

 内科と外科が連携して治療にあたる意義について、高梨医師はこう話します。

「一般的な心臓病診療では、循環器内科医が診断し、手術が必要となれば外科に引き渡し、そこから先の治療は外科におまかせ、ということが多いです。しかし当センターでは内科医も手術の適応や方法などについてどんどん意見してきますし、外科医も検査や診断にまで口を出します。口を出すということは、その結果に対する責任も負うということ。術後には治療結果をしっかり検証し、必ず次の治療につなげられるようにします」

 このように、内科と外科で意見を交わし、互いにブラッシュアップしていくチームとしての取り組みが、多くの手術をおこなえる心臓病センターの実力につながっています。

 心臓病の手術数全国ランキング1位になった同院ですが、病床数や手術室の稼働率などを鑑みても、これから先「まだ手術数を増やせる『伸びしろ』はある」と高梨医師は話します。さらに、大動脈センターと心臓病センターを両輪とする川崎幸病院の心臓病診療は、「まだ完成途上」ともいいます。

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両センターが互いに技術をみがく