大規模災害時の避難所不足に備え、国や自治体がすすめる「在宅避難」。不安の中で避難生活を送らなければならない被災者にとっても、住み慣れた自宅で寝起きすることは気持ちを落ち着かせ、不安をやわらげる効果がある。危険がなく継続して住める状態であれば、在宅での避難が最初の選択肢になるだろう。『【保存版】新しい防災のきほん事典』(監修 永田宏和・石井美恵子)から、在宅避難のメリット、デメリットをまとめておきたい。

【図版】どこで起きてもおかしくない! 主要活断層の地震発生予測

在宅避難のメリット

 在宅避難の最大のメリットは、住み慣れた家でプライバシーを守りながら暮らせること。とくに赤ちゃんやペットなどがいる場合、泣き声などで周囲に気を使わずにすむ。普段と同じ環境で、人目を気にせずに過ごせる時間と場所があることは、在宅避難ならではのメリットだろう。

 女性や子どもを狙った犯罪や置引などが起こりやすい避難所と比べると、防犯面でも安全だ。逆に空き巣を狙う人たちが増えるので、ベランダや庭先に洗濯物を干しておくなど、在宅であることをアピールしたい。一戸建ての場合は、あらかじめ玄関に電池タイプの人感センサーのライトをつけておくのも有効だ。

 大勢の人が共同生活をする避難所では「三密」が避けられないが、自宅ならそのような心配は不要だ。災害後は上下水道が止まることも多く不衛生になりがちなので、家族がお互いに注意して、常に清潔な状態を保てば、感染症を予防することもできる。

 体調管理も、在宅のほうがしやすいだろう。災害後は、ストレスで体調を崩しやすくなる。とくに高血圧や糖尿病などの生活習慣病を抱えている場合は、環境の変化により血圧や血糖値のコントロールが難しくなる。自宅で暮らすことで、ストレスも最小限に押さえることができる。

在宅避難のデメリット

 在宅避難には、避難所から離れているために情報が伝わるのが遅いというデメリットもある。災害の直後は被害の全体像が見えず、うわさやデマも流れやすくなるが、避難所なら、開設後すぐにテレビが設置されたり、新聞の号外が配布されたりする。行政からのお知らせなども避難所に集まるので、在宅避難中であっても避難所には毎日通って、積極的に情報を得るようにしたい。

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救援物資が届かない