日本でもっとも優秀な高校生が入学するといわれる東京大学理科三類。過去60年間で、合格者数トップになった回数が最も多かった高校はどこか。また2022年、初めて1位になった女子校は――。教育ジャーナリストの小林哲夫さんが、理三に合格した「天才」たちのエピソードとともに、過去の合格高校のデータを振り返る。※『改訂版 東大高校合格盛衰史』(光文社新書)から一部抜粋

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 2022年、東大理三合格者1位は桜蔭だった。同校初、そして初めての女子校トップである。

 温故知新。

 いまから60年前の1963年はどうだったのだろうか。ランキングを作ってみた。

 1位日比谷、2位灘である。同年の東大全体のトップは日比谷で168人、翌年の1964年には193人の合格者を出している。日比谷の全盛期だった。

 63年理三合格者92人の出身校は、公立63人、国立10人 私立19人となっている。地方の公立高校が勢いがあった時代である。なお、このとき、いまの理三合格上位常連校の開成、桜蔭が登場していなかった。

 2022年、東大理科の合格最低点は理一303点、理二287点、理三348点だった。東大入試では1点のあいだだけで優秀な受験生がひしめいている。同じ東大でも、理三との差が理一で45点、理二で61点だから、これは天文学的な数字のように見えるようだ。東大で他の科類からすれば理三は別世界であり、天才、秀才的な地頭をさらにハンパない努力で鍛えないと受からない、と言われている。実際、駿台予備学校、河合塾の東大模試上位成績者は理三志望者で埋め尽くされる。上位60人ぐらいはそのまま理三合格者となってしまう。

 理三に日本でもっとも成績が良い高校生が入る。最先端研究に取り組む、医療現場で命と健康を守るという強い志を持って受験するのが大半だろうが、灘高校の元教員によれば、自分の頭の良さを証明するために理三を受けた。入学後も駿台の東大模試を受けて頭の良さを確かめる者もいたという。 

 理三は62年から募集を開始した(それ以前は理一、理二から受験して医学部へ進学)。理三合格史60年からエピソードをいくつか紹介しよう。

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小林哲夫
小林哲夫

NEXT7浪の末に理三に合格
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