米上空の中国偵察気球を撃墜 残骸の回収 (提供写真)(アフロ)
米上空の中国偵察気球を撃墜 残骸の回収 (提供写真)(アフロ)

 中国が飛行させた無人偵察用気球であると強く推定される――防衛省は過去に日本領空で確認された気球型の飛行物体について、そう見解を示し、情報収集や警戒監視を強めている。さらに同省は外国政府の偵察用気球が領空侵犯した場合の武器の使用要件を緩和する考えだ。米国では偵察用気球を撃墜するための気球の開発も進んでいるというが、今後、どのような対策を取るのが望ましいのか。軍事評論家で、フォトジャーナリストの菊池雅之さんに話を聞いた。

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※記事の前半<<「偵察気球」が日本に現れたら自衛隊は撃墜できる? 地上や海上からの「高額ミサイルでも当たらない」理由>>から続く

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 振り返ってみれば、日本政府の「謎の気球」への対応も米国とよく似ている。

 日本では高高度気球の打ち上げは搭載する無線機器の許可申請が厳しく、気象庁、JAXA、徳島大学など、ごく限られた組織、団体でしか行われていない。もちろん、打ち上げの際には関係機関に周知される。そのため、正体不明の気球が話題になった時点で、政府はそれが国外から飛来したものであることを認識していたはずである。

 しかし、20年に宮城県で目撃された気球について、当時の河野太郎防衛相は「(気球の進路は)気球に聞いてください」と、とぼけた発言をした。

 ところが、である。

 今年2月14日、防衛省は宮城県で目撃された気球を含めて、少なくともこれまでに三つ以上の気球が領空を侵犯していたこと、さらに「分析を重ねた結果、当該気球は、中国が飛行させた無人偵察用気球であると強く推定される」と発表した。つまり、防衛省は一般には知られていない気球も探知し、「中国」と名指しできるほどの分析が可能な量と質の情報を収集してきたことになる。

 現在、内閣情報調査室は情報収集衛星を複数体制で運用し、地球上の特定地点を1日1回以上モニタリングしている。ただ、衛星情報にアクセスできるのは防衛省・自衛隊でもごく限られた人員だけなので、これらの気球の探知にどう関わったのかは不明である。

電波情報収集機が活躍

 いずれにせよ、気球がどのような意図を持っているか、つまり、敵対行為を行っているかがわからなければ、武力行使は容易には行えない。なので、調査は非常に重要となる。

「今回の中国の偵察用気球の一番の目的は米軍基地の電波傍受だといわれています。米軍は気球に向けてRC-135電子偵察機を飛ばしました。これによって気球がどのような電波を収集し、得られた情報をどう発信しているか、調べたはずです。さらにU-2高高度偵察機を接近させて、わざわざパイロットの目視で搭載装置を確認させています。かなりしっかり裏をとったうえで撃墜したことがうかがえます」(菊池さん)

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