がんの3大療法の一つである放射線治療は、ここ20年ほどの間に急速な進歩を遂げ、根治のための有力な治療手段に位置づけられるようになった。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2023』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数・治療数の多い病院をランキングにして掲載している。ここでは、「食道がんの放射線治療」の解説記事とともに、食道がんに対する放射線治療患者数が多い病院を紹介する。

【ランキング】食道がん放射線治療新規患者数トップ20!1位は北海道の病院

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 食道がんのI期からIII期までの標準治療は、手術が第1選択だ。手術ができない、あるいは手術を希望しない場合の治療として、放射線と抗がん剤を組み合わせる「化学放射線療法」が位置付けられている。広島大学病院の永田靖医師はこう話す。

「化学放射線療法は二番手の印象がありますが、I期では手術と比較した治療成績はほとんど差がないというデータが出ています。また、II期からIII期では、臓器温存を希望する患者さんに根治的化学放射線療法を先行し、腫瘍が残存あるいは再発した場合に救済手術をおこなう治療の有用性も示されています」

 なおIV期でも、遠隔転移がないIVa期(がんが食道の周囲の組織に広がって切除できない状態)であれば、根治目的の化学放射線療法がおこなわれる。

■IMRTや粒子線治療で合併症の発生を防ぐ

 化学放射線療法の最大のメリットは、臓器の形と機能を温存できること。手術では食道だけでなく周囲のリンパ節や胃の一部も切除し、残った胃や腸をつり上げて食道を再建するため、食べ物をのみ込みにくい、誤嚥しやすい、十分な量が食べられないなど食生活に影響が出る。のどに近い部分にがんができると、咽頭や喉頭も切除しなければならず、声を失うこともある。

「化学放射線療法は、食道もその機能も温存されるため、食生活や声への影響は少なく済みます。QOL(生活の質)の面では、圧倒的に有利です」(永田医師)

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化学放射線療法は通常、放射線を30回照射