警視庁が公開した容疑者の男の画像(22年11月29日午後0時ごろ、相模原市中央区で撮影されたもの)
警視庁が公開した容疑者の男の画像(22年11月29日午後0時ごろ、相模原市中央区で撮影されたもの)

 東京都立大学教授の宮台真司氏(63)が昨年11月29日に刃物で切りつけられ重傷を負った事件で、警視庁は2月16日、昨年12月に死亡した相模原市の無職の男(41)を容疑者として特定したと発表した。衝撃的な事件から約3カ月。その間にさまざま明らかになった事実もある。宮台氏とトークイベントで共演したこともある筑波大学教授で精神科医の斎藤環(たまき)氏が事件を読み解いた。

【襲撃事件直後の現場の様子はこちら】

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 男の実家は神奈川県相模原市にある。2階建ての一軒家で、ここに男の両親が住んでいる。そこから約300メートル離れた場所に「別宅」があり、男はここで寝泊まりする生活を送っていたようだ。

 近所の主婦は、男の暮らしぶりをこう話す。

「7~8年くらい前、母親が『この家を購入しました』とあいさつに来ました。最初の数年は、キリスト教系の宗教の食事会を開いていたようで、人が集まっていました。4~5回、そんな光景を見かけました。私も母親から『来ませんか?』と2度ほど勧誘されましたが、仏教徒なのでお断りしました」

 母親はキリスト教系の新興宗教「エホバの証人」の信者だったとされ、男の別宅は集会所になっていたとの報道もある。

 2月6日、「エホバの証人」はメディア用ステートメントと称して、「私たちは,こうした痛ましい事件が起きたことを大変残念に思っています。(中略)エホバの証人は暴力を憎み,避けています」と遺憾の意を表明している。AERA dot.が改めて教団に事実関係を問うと「母親はエホバの証人の一人です」と認めたうえで、集会所という指摘については「母親が個人として友人をお茶や食事に招く際,別宅を使用していたようです。この家屋がエホバの証人の集会場として使用されたことは一度もありません」と回答した。なお、容疑者の男については「エホバの証人とは一切関係がありません。エホバの証人の集まりに出席していたこともありませんし,エホバの証人と聖書を学んでいたこともありません。エホバの証人の中に容疑者と面識のある人もいません」とのことだった。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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母親は「良い精神科の病院を知らないか」