クロちゃん
クロちゃん

 安田大サーカスのクロちゃんと言えば、日常的にSNSで叩かれまくる当代随一の「サンドバッグ芸人」である。『水曜日のダウンタウン』などのバラエティ番組で数々の問題行動を起こし、世間を騒がせてきた。

【写真】10年ぶりにできたかわいい彼女とクロちゃんはこちら!

 SNSで家まで歩いて帰ると書いていたのに、実際にはちゃっかりタクシーを利用していたことに始まり、SNSでアップされている日々の食事メニューの写真も嘘まみれだった。恋愛系のバラエティ企画では女性が口をつけたグラスを舐め回したり、自撮りのふりをして盗撮をしたり、2人同時に口説こうとしたり、常人離れした気持ち悪い言動の数々で視聴者を凍りつかせた。

 しかし、近年、彼に対する世間の評価に変化のきざしがある。そのきっかけは『水曜日のダウンタウン』の恋愛リアリティショー「MONSTER LOVE」でプロポーズを成功させて、10年ぶりに彼女ができたことだ。

 さらに、どんなに叩かれてもどこ吹く風でアイドル気取りの自撮りツイートを連投する彼には、そのメンタルの強さを称賛する声も聞かれるようになった。いまだに彼のSNSには一般人からの罵詈雑言のコメントが届いているものの、ネタとして楽しんでいるような人も多く、そこまで本気で嫌われているようには見えない。

 激しいバッシングを受けても一切落ち込む様子を見せることなく、強気な態度を崩さない彼のメンタルの強さを評価する人も増えてきている。1月に出版された彼の著書『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由』(徳間書店)では、そんな彼の知られざるメンタル管理術が明かされている。

 彼が信念として掲げているのが「努力は絶対にしない」「損だけは絶対にしたくない」「僕は絶対に悪くない」の3箇条である。どれも常識的な感覚とは正反対のように見えるが、そこには彼なりの合理性がある。

 学生時代、クロちゃんは受験勉強をするのが嫌だったので、生徒会長になって、内申点を上げることで受験を突破しようとした。必死で努力しても報われるとは限らない。報われるかどうかわからないことに労力をかけるのは割に合わない。それよりは別の抜け道を探すか、好きなことに専念した方がいい。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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叩かれて傷つくだけでは損をするという気持ち