阪神の岡田彰布監督
阪神の岡田彰布監督

 阪神の春季キャンプで、ユニークな練習が話題を呼んだ。

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 メディア報道によると、俊足の選手が本塁付近に集められると、それぞれの選手がトスした球を三遊間に打って、一塁を駆け抜けてタイムを計測した。いわゆる「走り打ち」は、現代の野球のトレンドでは「良くない打ち方」とされている。しっかり振り切ったほうがヒットゾーンに打つ可能性が高く、走り打ちは「強い打球が打てなくなる」と弊害を指摘する指導者が多い。

 この練習を発案したのは、岡田彰布監督だという。スポーツ紙記者は、この練習の狙いをこう指摘する。

「きっちり振り切って強くインパクトするのが打撃の基本です。ただ好投手に2ストライクと追い込まれた時はクリーンヒットを打てる確率が低い。その時に難しい球を三遊間に転がして内野安打にする走り打ちは高度な技術として引き出しの1つになる。キャンプで臨時コーチに招かれた赤星憲広氏はこの技術に長けていました。甲子園は土のグラウンドで打球の勢いが殺されるので、左打者が三遊間に転がせば内野安打になる可能性がある。追い込まれた時の対処方法を増やすために、理にかなった練習だと思います」

 昨季の489得点はリーグ5位。本拠地が広い甲子園で本塁打量産を望めないため、機動力がカギを握る。110盗塁はリーグ断トツトップだったが、盗塁でなくても俊足は生かせる。同点の2死三塁でクリーンヒットでも、内野安打でも決勝点を生み出せば殊勲打であることは変わらない。内野安打を稼ぐことはチームの大きな助けになるのだ。岡田監督のアイデアにSNS上では賛否両論の声が上がっているが、シーズンでどのような効果をもたらすだろうか。

 プロ3年目の佐藤輝明の打撃スタイルにもメスを入れた。指揮官がミートポイントを前にするように助言を与えると、キャンプでサク越えを連発している。カットボールやツーシームなど現代の野球は手元で曲がる変化球が多いため、体に近いポイントで打つことが主流になっている。岡田監督の助言は一見すると、この流れに逆行しているように見えるが、スポーツ紙デスクは評価する。

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