菅野智之(左)と藤浪晋太郎
菅野智之(左)と藤浪晋太郎

 球団の垣根を超えて自主トレを行う姿が、日常の風景になっている。

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 巨人岡本和真は同じ長距離砲の西武・中村剛也と6年連続で自主トレ。オリックス・杉本裕太郎は憧れの楽天・浅村栄斗に弟子入りを志願し、今年1月に沖縄県内で自主トレを行っている。また、中日で遊撃のレギュラー定着を目指し、今シーズンから登録名を「龍空」に変更した土田龍空も守備の名手で知られる広島・菊池涼介から学ぼうと、静岡県内の合同自主トレに参加している。昨年は巨人・菅野智之と阪神・藤浪晋太郎が一緒に自主トレを行い話題になった。巨人と阪神はライバル同士だが、伸び悩む藤浪が尊敬する菅野から学ぶことを志願して実現した。

 スポーツ紙記者は、「お手本になる選手と一緒にやることで大きな刺激を得られ、レベルアップにもつながる。『敵チームの選手とは口をきくな』と言われていた時代を考えると、信じられないですけどね。五輪やWBCなど日本代表で活動するようになってから、他球団の選手との距離が近くなったように感じます。試合後に、一緒に食事をすることも珍しくないですから」と語る。

 現在は選手同士がグラウンドで談笑する姿が珍しくないが、かつてのプロ野球は、試合中にピリピリムードが漂っていた。巨人とヤクルトが優勝争いを繰り広げていた1990年代は、乱闘騒ぎが何度も起きている。主力選手に死球をぶつけると、報復の連鎖に。互いのベンチからヤジが飛ぶ殺伐とした雰囲気だった。

 武闘派で知られた中日・星野仙一監督も他球団の選手との談笑を許さなかった。

 名古屋のテレビ局関係者は、「星野監督にとってグラウンドは戦場です。相手チームの選手と談笑するなんて考えられない。選手にもその精神は浸透していて、白い歯を見せる選手はいませんでした。乱闘でも星野監督が先頭を切って向かい、『乱闘要員』と呼ばれた選手たちが暴れる。今だったらSNSで炎上しますね。ただ、勝利への執着心を凄く感じました。昭和の武骨な野球ですね」と振り返る。

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