毎日忙しい。だが、私の人生、これでいいのだろうか――。ふと、こんな疑問がわく人も少なくないだろう。そんな人に、「人生を長期戦略で考える」ことをすすめるのが、新進気鋭の経営思想家、ドリー・クラーク氏だ。ドリー氏は、「Thinkers 50」(2年に1度選ばれる世界の経営思想家トップ50)に2回連続で選出。彼女の著書『ロングゲーム 今、自分にとっていちばん意味のあることをするために』(ドリー・クラーク著/桜田直美訳/伊藤守監修/ディスカヴァー・トゥエンティワン)から、最初の一歩の踏み出し方について、一部抜粋・編集して紹介する。

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 カレンダーに余白が欲しい、考える時間が欲しいと誰もが言う。いつでも先のことが気になり、目の前の瞬間を楽しむ余裕がない。たとえ最高の仕事をしていても、つねに追い立てられているようで惨めな気分になる。大きすぎる要求やプレッシャーに押しつぶされている。

 それなのに、なぜ私たちは立ち止まれないのだろう?

◆「忙しさ」で自分をアピールする

 どうやら私たちは、この忙しい状態を密かに歓迎しているようだ。短期の「実行モード」には「隠れたメリット」がある。

 コロンビア・ビジネススクールのシルヴィア・ベレッツァらが行った研究によると、少なくともアメリカでは、忙しいことは社会的なステータスの高さにつながるという。

「雇用主やクライアントから価値を認められる人的資本(仕事の能力や野心)をもつ個人は、

 労働市場での需要が高く、供給は少ない。そのため、『自分は忙しい。休む間もなく働いている』というのは、『自分は求められる人材だ』とアピールしているのと同じということになる。その結果、まわりからも一目置かれるようになるのだ」

 言い換えると、激務をこなし、それをまわりにアピールするのは、意識的にせよ、無意識にせよ、自分の自尊心にとって大切だということだ。

 もちろんゆっくり考える時間は欲しい。だが、その時間が「ある」というのは、社会でそれほど必要とされていないということかもしれない。

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前提が正しいことははっきりしている。問題は…