写真はイメージです(GettyImages)
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 持ち主の意志とは関係なくスマートフォンが作動を起こし、警察や消防本部に緊急通報してしまう事例が全国で急増している。記者も気づかぬうちにiPhoneが「緊急SOS」の画面になっていて慌てて停止ボタンを押したことがある。実はスマホには身に迫る危険を知らせる、衝撃を検知して自動発信する機能がある。命を守る機能ゆえに、いちがいにはダメとも言えず、関係者も頭を悩ませているようだ。誤発信の実態に迫った。

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 1月上旬の冬晴れの長野県。北アルプス広域消防本部通信司令室に緊急通報がかかってきた。担当官が受けたものの、受話器の向こうの相手は無言。そのまま切れてしまった。

 担当官はすぐにかけなおした。

「どうされました?」

 電話の持ち主は白馬村スキー場でスキーの最中。緊急通報したつもりはないという。ケガがないことを確かめ、処理を終えた。

 昨年9月、iPhone14が発売されて以降、こうしたスマホの持ち主の意志に関係なく、またその必要性もないのに、緊急通報されてしまう“誤発信”が全国から報告されるようになった。

 アップル社によると、最新バージョンのiOSを搭載した「iPhone14」「iPhone14Pro」のモデルには、車が激しく衝突したことを検知する「衝突事故検出」の機能が、最新バージョンのwatchOSを搭載した「Apple Watch Series8」「Apple Watch SE(第2世代)」「Apple Watch Ultra」の各モデルには、人が転倒したことを検知する「転倒検出」の機能がそれぞれあり、緊急通報をして助けを呼ぶようになっているという。

 消防庁防災情報室の担当者はこう話す。

「iPhoneを入れたままのカバンを投げたり、iPhoneを床に落としたり、海上でスキージェットをしていて、自動発信で119番通報してしまうという事例が報告されています。冬になり、消防本部からは、スキー・スノボシーズンを迎え、ゲレンデから119番通報される事例が異常というほど多いと聞いています」

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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