犯行後、一時は山上容疑者の母親を自宅に避難させ、検察の取り調べにも応じさせた。そして山上容疑者にも差し入れを続けている。

「徹也は、『やったことは事実で、償わなければいけない』という思いです。銃まで密造して、犯行に及ぶというのは尋常じゃない。そこまで追い込まれていたということ。その動機は、旧統一教会への多額の献金で家族が崩壊させられたことに他ならない。メディアでは早くも徹也の判決が『無期懲役』などとする予想が報じられている。無期懲役というのは徹也の口を封じる判決に他ならない。それで得するのは旧統一教会から選挙とカネで支援を受けた自民党です。裁判所は、徹也の思いを聞いて判決を出してくれると信じたい」

 伯父によると、山上容疑者が鑑定留置で長くいた大阪拘置所には、たくさんの食べ物、本、現金などの差し入れがあった。留置場に置けず、伯父宅に送られてきたお菓子などもあるという。

「何十万円も入った分厚い封筒や、遠く北海道から『何かできることはないか』という内容の手紙も送られてきた」

 といい、こうも話す。

「私がメディアの取材に応じて表に出ているためか、旧統一教会の内部からと思われる情報も入ってくるようになりました。なかには、徹也の犯行動機とされる安倍元首相のビデオメッセージが、どういう経緯で出ることになったのかを伝えてきた人もいました。徹也の母親が相も変わらず旧統一教会への信仰を続けるなか、私は徹也の社会復帰と旧統一教会の極悪さをわかってもらうため、やっていきたい」

 令和最大の事件とも言われる安倍元首相銃撃事件。どんな理由であれ、殺人が肯定されることはあり得ないが、山上容疑者のもとに現金や多くの差し入れが送られてくるように、「同情論」があるのも事実だ。前出の山之内氏がこう語る。

「殺人は絶対に許せません。しかし、背景に旧統一教会のカネ集めがあり、それによって人生がめちゃくちゃになった山上容疑者の境遇に同情を寄せたくなる気持ちもわかります。裁判員は一般市民から選ばれています。同情論がどう裁判員に響くのかも大きなポイントだと思います」

(AERA dot.編集部 今西憲之) 

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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