女性がかかるがんの中で、最も多い乳がん。毎年9万人以上の人が乳がんと診断されています。多くのがんは60歳以降で発症しやすく、高齢になるほど増えますが、乳がんはより若い世代で発症しやすく、AYA世代と呼ばれる15歳から39歳までに発症する人もいるほか、40代でかかる人が多いのが特徴です。このため、妊娠や出産への影響や仕事や子育てとの両立が課題となります。本記事は、 2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。

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 乳がんの5~10%は遺伝が原因と言われています。その中で最も多いのが、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」で、「30代のうちに発症しやすい」「卵巣がんも発症しやすい」「両側の乳房に発症しやすい」という特徴があります。40歳以上の女性は2年に1回、マンモグラフィー検査を受けることが推奨されていますが、遺伝性の場合はそれよりも若い世代で発症しやすいため、血縁関係が近い人の中に乳がんや卵巣がんになった人がいれば、40歳未満でも検診を受けておいたほうがいいと言われています。

 マンモグラフィー検査は、乳房のX線検査のことで、乳がんの初期症状である石灰化を映し出せるため、早期発見に有効だと考えられています。ただし乳腺の割合が高い「高濃度乳房」の人は、しこりが映りにくいという難点があります。高濃度乳房の人は超音波検査を併用することで、乳がんを発見しやすくなります。

 乳がんは自分でも見つけられるがんです。しこりが2センチ程度になると、自分で触れて気づくことができます。そのほか、皮膚のくぼみやひきつれ、乳頭の陥没が見られることもあります。がん細胞から出血すると、乳頭から血液の混じった黄色や茶褐色の分泌液が出る場合もあります。

 乳房を意識して生活することは「ブレスト・アウェアネス」と呼ばれ、日ごろから自分の乳房に異変がないかどうかを鏡で見たり、触れてみたりしてチェックすること、気になることがあれば早めに乳腺専門医を受診することが重視されています。

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