がんの中で死亡者数が最も多い肺がん。男性は女性に比べて約2倍多く、50代ごろから増え始め、高齢になるほど発症する人の割合が多くなります。本記事は、2023年2月27日発売の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けします。

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 肺がんは、形態によって「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」「小細胞がん」の四つの組織型に大別されます。約半数を占め、増え続けているのが腺がんで、たばこを吸わない比較的若い女性でも発症するのが特徴です。肺の奥のほう(末梢)にできやすいため、症状が出にくく、見つかったときにはすでに進行していることもあります。

 腺がんの次に多く、約25~30%を占める扁平上皮がんは喫煙者に多く、太い気管支がある「肺門」にできやすく、比較的早期からせきや血痰(けったん)などの症状が出ます。

 しかし本来肺がんは、早期に見つけて治療すれば治る可能性が高いがんでもあります。早期に見つけるための方法が検診で、主にX線検査とCT(コンピューター断層撮影)検査があります。CT検査はX線検査では見つけられないような小さながんを発見しやすく、米国のヘビースモーカーを対象とした調査では、定期的にCT検査を受けたグループはX線検査のみを受けたグループに比べて死亡率が下がったという結果が出ています。

 しかし現在日本で40歳以上の人を対象に推奨されているのは、年に1回のX線検査で、喫煙者は痰の中の成分を調べる「喀痰細胞診」を追加しているのが現状です。人間ドックなどでは、CT検査も含むものが増え、特に被ばく量が少ない低線量CT検査が徐々に普及しています。

 CT検査では、小型のすりガラス状の病巣が見つかり、早期の肺腺がんと診断されることがあります。自治医科大学さいたま医療センター長で呼吸器外科教授の遠藤俊輔医師はこう話します。

「すりガラス状の肺腺がんは、切除すればほぼ完治しますが、進行がゆるやかなことが多く、数年経ってもほとんど大きくならないこともあります。肺がんを疑わせるすりガラス病巣が見つかった場合、急いで切除せずに2~3カ月後に再度検査をして、病巣の変化を見極めてから手術するかどうかを決めることが重要です」

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過度に肺を切除しすぎると、術後の生活に影響が