中国からの入国者に義務づけられた抗原検査の列に並ぶ旅客=2022年12月30日、成田空港
中国からの入国者に義務づけられた抗原検査の列に並ぶ旅客=2022年12月30日、成田空港

 日本入国時の新型コロナへの水際対策は、昨年11月から、それまでのMySOSというアプリから「Visit Japan Web」(VJW)というオンラインの入国手続きで行うことになった。「入国審査」「税務申告」に加え、「検疫」も一度に済ませることができるサービスだ。事前にパスポートやワクチン接種証明書などの必要情報をアップロードしておく必要あるのだが、これがほとんど意味をなしていない。

【図版】オンライン入国手続きの画面はこちら(デジタル庁のホームページから)

 12月下旬、タイ・バンコクから韓国・ソウル経由で帰国した。

 ソウルには4日ほど滞在し、帰国する前日にVJWの申請をした。事前にアカウントをつくり、パスポートやワクチン接種証明書などを読み込む。日本での滞在先、健康状態などを打ち込んで申請するとメールが届く。そして次の申請手続きへ……。

 これにそこそこの時間がかかる。僕の場合、2時間ほどを費やしてようやく承認された。承認されると、トップ画面が赤から青に変わり、その下にQRコードが発給されるという流れ。

登録内容によってスマホ画面の色が違う
登録内容によってスマホ画面の色が違う

 翌日、帰国便は韓国のLCC、エアソウルだった。チェックインの列に並んでいると、航空会社のスタッフが必要書類を点検していた。スマートフォンの青くなった画面とQRコードを見せると、

「それではなく、ワクチン接種証明書はありますか?」

 と言われた。なので、前日にVJWに取り込んで承認されていると改めて伝えると、

「いえ、ワクチン接種証明書のほうが」

 釈然としなかったが、かばんの中から証明書を取り出した。

「それです。チェックインのとき、パスポートと一緒に提出してください」

 あの2時間かけた申請手続きはなんだったのか? なんのためのVJWなのか?

 そんな思いが込み上げた。というのも、実は、これと同じようなことがバンコクからソウルに向かうときもあったのだ。

 タイ国際航空のチェックインカウンターは、東京行きとソウル行きが同じだった。僕の前には帰国する日本人が並んでいた。皆、スマートフォンのVJW画面を見せているのだが、やはりワクチン接種証明書が必要と言われ、かばんの中から出していた。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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