ブックファースト新宿店で行われた、小川哲さん『君のクイズ』発売記念トークイベント+サイン会の様子。左が杉江松恋さん、右が小川哲さん
ブックファースト新宿店で行われた、小川哲さん『君のクイズ』発売記念トークイベント+サイン会の様子。左が杉江松恋さん、右が小川哲さん

『君のクイズ』発売を記念し、去る2022年10月28日、東京・新宿の書店「ブックファースト新宿店」にて、著者の小川哲さんのトークイベント+サイン会が開催されました。トーク相手である文芸評論家の杉江松恋さんと、本作やクイズの話はもちろん、村上春樹さん原作映画の話や、伊坂幸太郎さんが帯に推薦コメントを寄せたこと、はたまたクイズ番組にもし出演することになったら?など、会話は盛り上がりを見せ……いま多方面で話題の小川さんですが、『君のクイズ』に関するどのインタビュー&対談でも語られなかった興味深い話が多数飛び出した本イベントの模様を一部抜粋して特別にお届けします!
※途中でネタバレを含め本作の内容に触れています。未読の方はくれぐれもご注意ください。

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杉江松恋さん(以下:杉江):僕はYouTube(杉江松恋チャンネル「ほんとなぞ」)で千街晶之さんと一緒に、小説誌に載った短編を読んでオススメの作品を紹介するという番組(『千街・杉江の「短いのが好き」』)を配信しているのですが、「短編だ!」と言っているのに千街さんが『小説トリッパー』に載った中編小説の『君のクイズ』を挙げてきたんです。で、読んでみたらまぁ、面白いのなんのとびっくりして。Twitterにも書いたんですが、今年は『地図と拳』で直木賞を獲るだけじゃなくて『君のクイズ』で芥川賞も狙うつもりかと。

【ここで杉江さんが『君のクイズ』をご紹介】
 クイズの生放送の番組で、出場した三島玲央というクイズプレイヤー(クイズオタク)が決勝に残った。決勝の対戦相手は本庄絆という、最近になって頭角を現してきた天才的な東大生だった。あと1問で優勝が決まるというときに、まだ一文字も問題が読まれないのに本庄がボタンを押して正解をする。その答えは、「ママ.クリーニング小野寺よ」と、知らない人には到底答えられない問題だった。結果、「やらせじゃないか」と大炎上し、本庄に負けた三島は「なぜ、本庄は答えられたのか」「やらせ以外の理由はあるのか」ということを考えていく。

杉江:皆さんがまず聞きたいのは、「なぜ、クイズなのか?」だと思うのですが。

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なぜ、クイズなのか?