医薬品業界の「黒船」が与える影響は…(gettyimages)
医薬品業界の「黒船」が与える影響は…(gettyimages)

 あのアマゾンが処方薬の販売事業参入を検討している――9月5日夜、日本経済新聞がそう報じると、調剤薬局業界に激震が走った。翌日、業界最大手のアインホールディングスを始め、上場している調剤薬局各社の株価はほぼ全面安となった。米アマゾン・ドット・コムが日本での調剤薬局事業に参入するのは2023年1月から始まる電子処方箋(せん)の導入に合わせたものとみられるが、業界関係者たちの声は重苦しい。ある大手調剤薬局に話を聞こうとしたところ、「取材に協力できることは何もありません」と、けんもほろろに断られた。電子処方箋を利用すれば薬の受け取りはインターネット上で完結する。アマゾンのオンライン販売の優位性は誰もが知るところだ。アマゾンの参入によって、私たちの医療がどう変わるのか、取材した。

【写真】編集部が入手したアマゾン薬剤師の募集要項

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「アマゾン薬局」のオープンに向けて、着々と準備を進めているのか。

 AERA dot.はアマゾンの薬剤師募集の情報を入手した。そこには、こう書かれている。

<アマゾンで医薬品販売するために医薬品専用物流センター(大阪)において、医薬品販売するために必要な、お客様への情報提供、適正販売の判断、薬機法遵守した販売のサポート等をおこなっていただく業務となります>(かっこは筆者付記。「薬機法」とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)

アマゾン薬剤師募集の知らせ(撮影/米倉昭仁)
アマゾン薬剤師募集の知らせ(撮影/米倉昭仁)

 月額基本給は46万2500円以上。これには月70時間の時間外労働手当に相当する金額などが含まれているが、「仮にこれがアマゾン薬局開始に向けての条件だとすれば、かなりいいと思います。都会の薬局に勤務している薬剤師であれば、応募する人はそれなりにいると思います」(業界関係者)。

オンライン薬局を体験

 すでに米国では2年前にオンライン薬局「アマゾンファーマシー」が立ち上がり、処方薬のデリバリーサービスを行っている。プライム会員は送料無料。24時間年中無休で薬剤師が患者の相談に応じる。さらに自動音声認識AI「アレクサ」が薬の管理を支援する。そんなノウハウを持ったアマゾン薬局がもうすぐ日本にやってくる――。調剤薬局業界にとっては、まさに黒船到来だろう。

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