サッカー日本代表の帰国会見
サッカー日本代表の帰国会見

 森保一監督が率いたチームがカタール大会で示したものは何だったのか。4年後の大会を目指す前に、しっかり押さえておく必要がある。日本は下馬評を覆し、ドイツに勝利を収め、スペインにも勝って、強豪ぞろいのグループEの首位でラウンド16に勝ち上がった。

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 フロック(まぐれ)でドイツとスペインを立て続けに破ることはできない。そこには理由があり、その理由こそが日本代表が継承していくべきものかもしれない。

 ドイツ戦、スペイン戦はいずれも前半に失点し、後半に逆転勝ちを収めているが、システム変更と攻撃的な采配、選手たちの能力の開放がうまく組み合わさり、良い流れをつくり出した。狙って先制されたわけではないものの、いずれも前半は劣勢で、苦しい戦いを強いられたのちに後半、反攻に転じている。

 先制されたことで図らずも選手の意思が統一され、前に出るしかなくなった。結果、チームの一つの方向に向いた状態で、ドイツ戦では相手の虚を突くシステム変更と攻撃策がはまった。そしてスペイン戦ではいきなりギアを上げて実践した前向きの守備で相手を飲み込んだ。いずれも逆転に成功した後は、5-4-1の相手の猛攻をやり過ごしている。

■進歩を遂げた「個」の力

 うしろは同数で守ることにもなったが、1対1に自信を持つ板倉滉、冨安健洋らDFたちが、マッチアップで後手に回ることなく、しっかり対応。4年前のロシア大会に比べても格段に進歩を遂げた日本の「個の力」を示してみせた。他ならぬ森保一監督が個々の成長によって采配の選択肢が増えたと語っていた。

 前後半で戦術を変えることは最初から狙っていた形ではなかったかもしれない。ただ、状況に応じて戦い方を変えることに成功し、逆転勝ちを収めたのは紛れもない事実だ。優勝経験国でさえ、その変化に対応できなかった。テストマッチでも試さなかった戦い方だったが、戦術理解力と実行力が日本の選手たちに備わってきたと言えるだろう。むろん、それを実行させた指揮官の手腕も語り落とせない。

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