放送作家の鈴木おさむさん
放送作家の鈴木おさむさん

 放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、夫婦でも理解してもらうことの難しさについて。

【貴重写真】妻の大島美幸さんとのツーショットはこちら

* * *

 僕は結婚して20年目になるのだが、最近、大事だなと思うのは、「無理しないこと」だなと思う。本当に小さいことなんですが、妻が家の中で離れたところから話しかけてくることがある。僕が部屋で仕事をしていると、離れたところから妻が僕に何か言っている。前だったら立ち上がって「どうした?」と聞きに行ったが。

 最近はそれをやめた。まあまあ聞こえる距離だったら立ち上がって聞きに行くが、明らかに風呂の掃除しながら話しかけていたり、「その距離からは無理だろ」と思う声に対しては、

 無理しないことにした。これって結構大事なことだと思うんですよね。だって仮に行かなかったとしても、本当に必要な用事だったらこっちに来て言ってくるし、結果、言ってこないこともある。僕が暇してたらいいのですが、作業してるときに一度、それを中断するって、結構大変なのだ。

 先日は、妻がベランダから話しかけてきたので、さすがに戻って来てから「今のは無理でしょ~」と笑って言ってしまった。妻も話しながら「この距離は無理だな」と思ったらしい。ということは、話しかけてる方も「この距離は無理だな」と思ってる時があるということだ。

 こういう小さすぎることを夫婦で話し合って解決していくって大事なことだと思う。

 コロナ禍になり、僕の「会議」はほぼリモートになった。妻は仕事するときは現場に行くことが多いが、僕は家の中で「会議」。だが、当初、妻からしたらリモートで会議してることは仕事に見えなかったのかもしれない。だけど、リモートで何時間も会議するって、対面で会議するときより疲れることもある。バラエティー番組の会議では、一見、ふざけたことを言ってるように聞こえるが、真剣に言っているわけである。僕の部屋から漏れ聞こえる声は、会議をしているように聞こえないかもしれない。

著者プロフィールを見る
鈴木おさむ

鈴木おさむ

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

鈴木おさむの記事一覧はこちら
次のページ
妻からしてみたら「ずっと家なんだ」