そういえば、安倍昭恵さんが登壇した17年の国際女性デーのイベントでは、「日本の未来を元気にする現役女子大生『キャンパスクイーン』」6人がつくった「幸せの黄色い花のミニブーケ」と彼女たちの目標を記した「幸せの黄色いハンカチ」を発表して、1人ずつ「夢宣言」を行うイベントがあった。現役女子大生とかキャンパスクイーンとか、そういう言い方がもう……という話なのだけど、日本の国際女性デーからは、そんなふうな、キラキラ光る宝石箱の中に若い女性を押し込めて無理やり夢を前向きに語らせようとするような怖さがある。男女平等を命がけで求めた泥臭い女の運動の歴史などはなかったかのような、軽さがちょうどいいのよ、男は恐がりだからあまり強くならないで……な、こぢんまり感がある。そしてそういう空気こそが、安倍さんのつくってきたものなのだろう。

 ニューヨーカーたちが行きたいと言った新宿の居酒屋は、会社帰りのサラリーマン(ほぼ9割男性)でにぎわっていた。女は家に帰り、食事の支度をしているのか、子どもの世話をしているのか、親の介護をしているのか、そもそも会社帰りに一杯の余裕もないのか。まるで「浅草寺に行ってきたよ~、観音様見てきたよ~」「富士急ハイランド行ってきたよ~」といった調子で、「日本ってウワサ通り~」「性差別体験してきた~」という軽さで日本の状況を語られると、性差別がいよいよ「観光地」レベルになってきたのかもな……という気持ちになる。たぶん、私はその居酒屋一、空気の重たい女だったろう。イキイキワクワクな軽さからは程遠い女のリアルだ。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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