個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、自身が執筆した映画シナリオの一部をご紹介するスペシャル回です。

【画像】佐藤二朗、仏のような笑顔

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 執筆はしたものの、金銭面などの理由で撮影に至らずにいる映画シナリオが僕には数本ある。このまま闇に葬るのも悔しいので、今日は特別に、その中から、ある映画シナリオの一部抜粋をお届けする。

 以下、映画「ヤマナミ(仮題)」(2011年1月5日脱稿)の一部抜粋(冒頭部分)。※ちなみに「一通(いっつう)」の役を僕がやるつもりでした。※12年前に書いた脚本で、古さを感じる箇所もありますが、あえてそのまま掲載します。

○どこかの一室

     白いガウンを着て、ソファに座っている男、一通。
     ベッドに浅く腰掛けている若い男、河崎。
     二人は小声でボソボソと何やら言い合っている。

一通 「なんで?いいじゃん、なんで?」
河崎 「いや、そういうのはちょっと」
一通 「なんで?いいじゃん」
河崎 「いや、ホント」
一通 「いいじゃんいいじゃん」

     何かをやらせようとしている一通、それを拒む河崎。
    (※言葉が被ったり、聞き取れなくて聞き直したりなどあってよい)
     しばらくその応酬が続き、やがて…。

一通 「…堅いね。緊張してる?」
河崎 「いや別に」
一通 「…お友達多い方?」
河崎 「…まあ」
一通 「うん」
河崎 「…」
一通 「何、ためるじゃん。引っ張るじゃん。そういうの引っ張るって言うんでしょ、ね、業界用語で、ね、お前引っ張りすぎだよ~とかって、今の若い子たちって、ね、業界用語で」
河崎 「(苦笑)いや…」
一通 「え?」
河崎 「それも、」
一通 「(殆ど同時に)だってさ、」
河崎 「(被ったので黙り)…」
一通 「うんごめん、何?」
河崎 「いや、それも、ちょっと『今さら』な感じが」
一通 「え何?今さら?」
河崎 「いや、『引っ張る』って」
一通 「え何?何が?」

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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