広島市で開業する中西内科院長の中西重清医師
広島市で開業する中西内科院長の中西重清医師

コロナ禍の中で注目された「かかりつけ医」。どんな病気でも幅広く診てくれる医師が求められているが、現在、開業医の多くはなんらかの専門科の出身で、すべての科を学んできた医師ではない。開業医で専門外の病気を診ようとすれば、日々の診療の傍ら、医師個人が勉強して日進月歩の医学の知識を習得するしかない。そんな志の高い医師が学ぶ場として「塾」を開塾し、自身も広島市で開業する中西内科院長の中西重清医師。呼吸器内科という専門がありつつ、「患者がなんでも相談できる医師」をめざす。なぜその道を選ぶことになったのか、開業医の現状と課題、かかりつけ医のあり方や選び方について聞いた。

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 中西医師の専門は呼吸器内科。開業したきっかけは、勤務先の総合病院での仕事に夢が持てなくなったことだった。

 1991年、41歳のときに開業。「呼吸器内科、一本でやっていこう」と思ったが、開業支援を頼んだコンサルタント会社から、「それでは患者が来ないから、内科を標榜したほうがいい」と言われ、そのようにした。開業前は内科の病気を全て、診療していたので、呼吸器疾患以外の病気に対応することにも、ある程度の自信を持っていたという。

「幸い、開院当初から患者さんがたくさん来てくれました。5年ほどたって、クリニックが軌道にのってきたので、勤務医時代にできなかったスポーツを始めました。スキー、テニス、ゴルフ……。どれものめり込んで、ゴルフはシングルプレーヤーに。後から気づいたのですが、これは開業医がヤブ医者化する典型的なパターンだったのです」

 医学の世界は医学知識のほか、薬や治療法などの進歩が早く、日々の診療の傍ら、学会や勉強会に出るなど、論文を読んで新しい知識や技術をアップデートすることが大事だと言われている。

「しかし、一般的に開業医は、経営が安定すると徐々に勉強をしなくなっていく。身近に指摘してくれる人がいないこともあるでしょう。そんなときに私の目の前に現れた救世主が、総合診療医の育成と普及に力を注いでいた田坂佳千(よしかず)医師でした」

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救世主の医師とはどんな人?