米オハイオ州デイトンで演説するトランプ前大統領=2022年11月7日
米オハイオ州デイトンで演説するトランプ前大統領=2022年11月7日

 バイデン米大統領は11月9日、中間選挙の開票が進むなか会見を開き、「『巨大な赤い波(共和党旋風)』は起こらなかった」と誇らしげに語った。共和党内でも「トランプ責任論」の声が出ている。しかし、米国政治に詳しい上智大の前嶋和弘教授は「トランプ大統領の復活は十分あり得る」との見方だ。

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「今回の中間選挙は、共和党が勝った選挙と言えるでしょう」

 前嶋教授はこう明言する。CNNは、日本時間の11日午後1時現在で、上院では民主党48議席、共和党49議席、下院では民主党198議席、共和党211議席を得るとの見通しを伝えている。下院では共和党がこのまま過半数を取る可能性が高い。

 当初の予想より共和党が苦戦しているとの見方もあるが、前嶋教授はこう解説する。

「上院で民主党が過半数を取ったとしても、下院で共和党が過半数を取れば、バイデン政権は、残りの2年間、内政で実現したい政策はほとんどできないでしょう。バイデン大統領は今回の結果を『民主主義の勝利』と訴えていますが、冷静に見れば、民主党が負けた選挙でしかありません」

 実際、トランプ氏は気勢を上げているところだ。FOXニュースデジタルの取材に対し、「私が支持した候補者はとてもよくやった。私は予備選挙で98・6%の打率で、国政選挙では216(勝ち)対19(負け)だった」と話している。

 トランプ氏は15日に「重大な発表」をすると公言しており、24年の大統領選への再出馬を宣言すると見られている。前嶋教授も「ほぼ間違いなく出馬宣言する」と見る。

 背景にあるのは、依然として続くトランプ人気の高さだ。CNNの出口調査によると、トランプ氏に対して「好ましい」と回答した人は全体で39%だった。「好ましい」と回答した95%が共和党支持者だ。

「トランプ氏は小さな政府を志向し、大規模な減税をした。中絶に反対するなどキリスト教福音派にも配慮している。アメリカの保守本流にある価値観を体現しているのが、トランプ氏という位置づけになっている。共和党内の対抗馬に、フロリダ州のデサンティス知事がいますが、まだトランプ氏ほどのカリスマ性はありません。現状ではトランプ氏が本命でしょう」(前嶋教授)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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