板尾創路さん(撮影/中西正男)
板尾創路さん(撮影/中西正男)

 芸人、映画監督、俳優とさまざまな顔を持つ板尾創路さん(59)。11月12日から始まる「関西演劇祭2022」(大阪・クールジャパンパーク大阪SSホール)ではフェスティバル・ディレクターも務めます。オンリーワンの存在感を放ち続けている板尾さんですが、来年には還暦を迎えます。人生の節目を前にして、「若い頃は自分のことしか考えてなかった」「やっと大人になれた」と語った真意とは。

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「関西演劇祭」は今年で4回目になるんですけど、今回もフェスティバル・ディレクターをさせてもらいます。

 今は仕事のほとんどが役者の仕事なんですけど、その目線からみると、今のお笑いにおける芝居の重要性みたいなところはすごく感じます。

 根本的に、お芝居と笑いは通じていると僕は考えているんですけど、最近は笑いの中の芝居のクオリティーがすごく上がっていると思います。今年の「キングオブコント」を見ても、ストーリー性があって、しっかりとした芝居の力がないと笑いにつながりにくい。なんなら、芝居がヘタだと一気にウケなくなる危険性すらある。すさまじいスピードでレベルが上がっていると感じます。

 とにかく今は芸人さんの数が多い。簡単にこの世界に入れることは悪いことじゃないのかもしれませんが、その分、競争率は当然上がります。相当クオリティーの高いことをやらないとまず見てもらえない。

 昔は人数的に少ないこともあって、明るく楽しいことで芸人が成立していたところもあったと思います。ただ、今はそれではお仕事をもらえない。しっかりした話術や練り上げたネタを見せないとスタートラインにも立てない。

 それに加えて僕らの若い頃はエンターテインメントの選択肢が少なかったですけど、今は選択肢が爆発的に増えてますからね。

 あらゆる“面白いもの”が湧いて出てくる中、人間がやる話や動きだけで面白いと思わせる。芸人の数も多いし、娯楽の数も多い。そら、相当突き抜けないと難しいですよ。ネタの中の芝居一つとっても、レベルが上がるはずです。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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