※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

親が脳卒中で救急搬送され、命をとりとめてほっとしたのもつかの間、急性期病院からは1カ月程度で退院を告げられます。後遺症が残った、寝たきりになった状態の親に、「家では世話ができない」と、急いで介護施設を頼ろうとしても、要介護認定を受けていないとスムーズに事は運びません。なかには、認定をめぐってトラブルになるケースも。介護アドバイザーの高口光子氏は「親が元気なうちから、要介護認定の申請を考えてほしい」と話します。そこで、申請を考えるきっかけとなる親の行動の変化をいくつか挙げてもらいました。

【チェックリストはこちら】親の要介護認定を考えるきっかけとなる行動の変化

*   *  *

■要介護認定を受けていないけれど、預かってもらえますか?

「脳卒中で倒れた父親が、退院して帰ってくるんです。一人暮らしで私たちも離れて暮らしているので、面倒をみる人がいません。どうしたらいいでしょう。そちらで預かってもらえませんか?」

元気がでる介護研究所代表の高口光子
元気がでる介護研究所代表の高口光子

 介護施設では、いきなりこういう問い合わせを受けることがあります。詳しく話を聞くと、まだ要介護認定を受けていない、申請もしていないとのこと。「介護施設を利用できるのは、要介護認定や要支援認定を受けた人だけですよ」と言うと、「これからすぐ申請しますから」という答えです。しかし、まず住んでいる地域でケアマネジャーを探し、書類を整えて申請し、そして認定が下りるまで1カ月、自治体によっては2カ月近くかかるところもあります。

 そう説明すると、「その間、どうしたらいいでしょうか」とさらに困惑した様子。藁(わら)にもすがる思いで私たちを頼られたのだと思いますし、私たち介護職も目の前の本当に困っている人の力になりたいとも思います。

 こういう場合、「暫定ケアプラン」という制度の利用を検討することができます。これはさまざまな事情から、認定が間に合わない場合に適応されるもので、仮の要介護度でサービスを前倒しで利用する仕組みです。ただしあくまでも仮の認定で、後日下される正式な認定と異なる結果になることも少なくありません。多くは、「それでもいいので利用したい、あとで違う結果になってもかまわない、対処します」と希望されます。

著者プロフィールを見る
高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

高口光子の記事一覧はこちら
次のページ
あとあとトラブルに発展するケースが少なくない