全国弁連事務局長の川井康雄弁護士
全国弁連事務局長の川井康雄弁護士

「これが、半年とか1年かかると、その間にまた被害者が増えてしまう。あるいは被害が大きくなることが懸念されます」

 これまで旧統一教会は問題が起こるたびに「信者が勝手にやったことで、教会とはまったく関係ない」と主張してきた。質問権が行使されても同様の返答ではぐらかされてしまう恐れはないのか?

 かぎとなるのは、指揮監督関係がある人物や法人の責任を問う「使用者責任」という。

「民事裁判で認められた『使用者責任』、つまり旧統一教会は信者に対して指揮監督権限を持ち、組織的に伝道活動や献金勧誘活動を行い、それが違法であると、20年以上前から非常に詳細に認定されています。にもかかわらず、現在まで同様な行為が繰り返されてきた。そこで旧統一教会は、信者に対してどのような指導を行ってきたかが問われるわけです。『きちんと指導を行ってきた』と回答しても、それがまったく果たされてこなかった実態がありますから、それが最終的な評価になる。質問権の行使はこのあたりがポイントになると思います」

世論を動かした2世の声

 一方、旧統一教会への質問権の行使とは別に、教団による霊感商法や高額献金などの被害防止と救済を図るための法案づくりが与野党で活発化している。その議論の柱の一つが消費者契約法の取り消し権の対象範囲の拡大である。

「さまざまな議論をしていただいて、『これなら』という具体的なアイデアも出ているようなので期待したい」と、川井弁護士は語る一方、これまで霊感商法被害に取り組んできた経験から「非常に難しい」とも漏らす。

「旧統一教会は信者の頭の中に教義を植えつけたうえで、こうすれば恐怖から逃れられる、ということを言ってお金を出させる。つまり、献金の勧誘にある程度長い時間をかけるわけですが、そのようなことを基本的に消費者契約法は想定していません。なので、旧統一教会問題への対応という点ではかなり困難だと思います」

 ただ、統一教会問題以外の、占いなど開運商法による被害の救済には取り消し権の対象範囲の拡大は有用で、かなり期待しているという。

 取り消し権の行使期間の延長も検討されている。現在、期間は5年間で、それを過ぎると消滅するが、延長されれば霊感商法被害の救済の可能性が少しでも増すという。

「霊感商法の場合、教義によって困惑してお金を出すわけですが、その後の脱会によって困惑がなくなった、というとらえ方でいけるのならば、取り消し権の行使期間を延長することで、問題の一つが解消されます」

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解散への困難な道のり…