22年10月20日、美智子さまの米寿の祝賀行事から戻り半蔵門を通過する両陛下(撮影/阿部満幹さん)
22年10月20日、美智子さまの米寿の祝賀行事から戻り半蔵門を通過する両陛下(撮影/阿部満幹さん)

 ご夫妻そろっての米寿のタイミング。晴れ晴れとしたお気持ちが伝わってくるようだ。 

「お引っ越しされてからは、より表情も服装も明るく、ヘアスタイルは後頭部のボリュームを落としてすっきりとまとめたスタイルを維持されていますね。私は男性ですが上皇后さまのファッションは上品でつい目が惹きつけられます。メイクも細かな部分まできれいになさっているなと感じます」(阿部さん) 

 その一方で、おふたりの表情が曇ったと感じることもあった。エリザベス女王が死去した時期だ。上皇さま美智子さまも9日から3日間の喪に服した。

 9月16日、美智子さまは足の血栓の検査のために皇居の宮内庁病院へ向かった。車には、皇居の生物学研究所に通う上皇さまも一緒だった。

 この日は、政府がエリザベス女王の国葬への参列を目的とした両陛下の訪英を閣議で決定した日でもあった。そして、千鳥ヶ淵近くの駐日英国大使館には、大勢の人が記帳と献花に訪れていた。

 阿部さんが言う。

「この日は、大使館での記帳を終えたのち、皇居の半蔵門付近に向かう人が多かった。みんな通過する上皇ご夫妻をひと目見よう、との思いであったようです」

 上皇ご夫妻の車が半蔵門を通過した。上皇さまはほとんど場合、奉迎の人がいれば手を振って答える。しかし、この日は上皇さまが手を振ることはなかった。おふたりは、静かに沿道の人たちに目を向けたという。

22年10月20日、美智子さまの米寿の祝賀行事から戻り半蔵門を通過する両陛下(撮影/阿部満幹さん)
22年10月20日、美智子さまの米寿の祝賀行事から戻り半蔵門を通過する両陛下(撮影/阿部満幹さん)

ローブモンタントの雅子さま

 上皇職が誕生日に公表した文書でも、美智子さまと親交の深かった人とのお別れについて触れている。児童文学者でIBBY(国際児童図書評議会)を通して友情を深めた松岡享子さん、ファッションデザイナーの三宅一生さん、森英恵さん、そして、「皇室典範に関する有識者会議」のメンバーとして、女系天皇も認める報告書をまとめた人物でもあった元内閣官房副長官の古川貞二郎さんなどである。

 この日の祝賀会は、両陛下と秋篠宮ご夫妻、元皇族や親族の代表、そして上皇ご夫妻に仕えた宮内庁幹部の代表などごく簡素な形で行なわれた。

 天皇陛下と昼の正装であるローブモンタントに身を包んだ雅子さまが午前11時前に皇居の半蔵門を出発。戻ったのは約1時間後。本来は30分ほどの予定が伸びたようだ。

 夜には88歳となったおふたりでお祝いの夕食を召し上がった。結婚から3人のお子さまを育てた33年間を過ごした思い出の建物に戻ったおふたり。穏やかな時間のなかで、これからも過ごされることだろう。(AERA dot.編集部・永井貴子)