稲田真優子さん
稲田真優子さん

「被告人を懲役20年に処する」。昨年6月、大阪市のカラオケパブ「ごまちゃん」の経営者、稲田真優子さん(当時25)が殺害された事件の裁判。殺人罪に問われた宮本浩志被告(57)への判決が言い渡されると、正面を向いたまま表情を一切変えない宮本被告とは対象的に、真優子さんの兄、雄介さんは、無念そうに天井を見上げた。

【写真】稲田さんの店に通っていたころの宮本被告はこちら

 10月20日に大阪地裁であった裁判。被告側はこれまでの公判で、犯行を否認し、無罪を主張してきたが、判決では、宮本被告の靴や上着に付いていた血痕が稲田さんのDNAと一致すること、SDカードが抜き取られた店内の防犯カメラの存在、合鍵の保管場所を事前に知っていたことなどから、

「常識に照らして(稲田さんを)殺害した犯人であると認められる」

 と結論付けた。

 動機についても話さなかった宮本被告だが、32歳も年下の稲田さんに、

「LINEに、『かわいい、声も素敵、嫌いになることができない』との記載があることが認められる」

「稲田さんへの好意や強い執着があり、他方、好意がそのまま被害者に受け入れられなかったことが犯行の動機に関係している」

 とした。

 被告人質問では十分な説明をせず、最終陳述では50分近い“大演説”。好き勝手にしゃべり、笑みすら浮かべてきた宮本被告に対し、

「殴ってやりたい、どついてやりたいと思ったがそれができない」

 と苦しい胸中を語っていた雄介さん。この日の公判は、真優子さんの写真を手に臨んだ。

 判決後、

「真優子の人生は25年、宮本は(懲役)20年、やっぱり怒りしかない。この判決は納得できない」

「宮本は罪を認めて、謝罪、反省を、と思ったが、真優子とは仲がよかったなど、一方的に言い訳をするばかり。何も語らず挑戦的な態度。どこに情状酌量の余地があるのか」

「25年分苦しんでほしい。20年で社会に戻るなら、残り5年は私が宮本に罰を与えたい。そういう気持ちだ」

 などと語った。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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ストーカー要素があり、ただの殺人罪ではない