■上咽頭を綿棒でこするEAT

 これらの後遺症に対して、有効な治療方法はまだ確立されていない。しかし最近、多くの症状に効果が期待できる治療として、EATが注目されている。EATは元々、慢性上咽頭炎の治療として行われていたものだ。

 実際の治療は、0.5~1%の塩化亜鉛溶液を染み込ませた綿棒を鼻やノドから挿入し、上咽頭をこする。

※日本病巣疾患研究会ホームページから
※日本病巣疾患研究会ホームページから
※日本病巣疾患研究会ホームページから
※日本病巣疾患研究会ホームページから

 上咽頭に炎症があると痛みを感じ、うっ血がひどい場合には出血して綿棒に血液がつく。痛みや出血があれば上咽頭が炎症を起こしていると診断でき、同時に炎症を抑える作用のある塩化亜鉛溶液を塗る治療にもなる。炎症がなければ痛みや出血はない。

「上咽頭に炎症があると、免疫細胞が作り出す炎症物質(サイトカイン)が血流に乗って全身を巡る状態が続いてしまい、自律神経や免疫の乱れを引き起こします。コロナ後遺症の患者さんがよく訴える胃腸の症状、例えば過敏性大腸炎や機能性ディスペプシアなどは自律神経の乱れが関係しているし、元々持っているアトピー性皮膚炎など免疫が関わる病気が悪化することもあります。EATは上咽頭をこすることで炎症性サイトカインを強制的に出させ、炎症を取っていきます」(堀田医師)

 EATは保険診療が可能で主として耳鼻科で行われ、基本的に週に1~2度、痛みや出血がなくなるまで行う。ほとんどの場合、痛みや出血の減少とともに症状も改善する。ただ、この方法を取り入れている医療機関はまだあまり多くなく、また正しく処置をしないと効果が出ないことがあるので、医療機関を選ぶ際には注意が必要だ。

 日本病巣疾患研究会のホームページ(https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/)でもEATが受けられる全国の施設を探すことができる。

 またEATは現在、関連の学会でガイドライン(治療指針)の作成作業が行われている。

■鼻うがいも試す価値あり

 最近、コロナの感染対策の一つとして鼻うがいがメディアなどでも取り上げられており、実際にアメリカではコロナの重症化予防に効果があるという論文が出された。コロナ後遺症に対してはまだエビデンスは出ていないが、一定の効果が期待できるのではないかと堀田医師は言う。

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鼻うがいでコロナ後遺症が軽減している人も