※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 子宮内膜症は良性疾患ではあるが、つらい月経痛などが閉経時まで続き、不妊の原因にもなる。どのような場合に手術を選択すべきか、また、妊娠などの将来設計に合わせた治療法や治療のタイミングについて専門医に聞いた。

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 子宮内膜症は卵巣、卵管、腹部の臓器を覆う腹膜、子宮と直腸の間のダグラス窩、子宮を後ろから支えている仙骨子宮靱帯、膀胱と子宮の間の膀胱子宮窩に発症することが多い。まれに肺や腸など子宮から離れたところに発症することもある。

 治療では月経痛など症状のコントロール、妊孕能(妊娠できる能力)の温存、そして良性腫瘍ではあるが、放置するとがん化する可能性もあるため悪性腫瘍の予防の三つをいかに実現できるかが重要となる。

 近年は、使用できる薬が増えたため、薬物療法が多い。できるだけ手術はせずに、子宮や卵巣を温存しながら治療することが勧められる。

 佐藤病院院長の佐藤雄一医師はこう話す。

「痛みを抑えるために、原因となる子宮内膜症細胞を手術で取ることもありますが、ピルをはじめとする薬物療法の進歩で、手術で取り除かなくても病気のコントロールが可能です。もちろん手術をしなければならない場合もあります。手術を選択するのは、破裂する恐れのある卵巣のチョコレート嚢胞や、悪性腫瘍の可能性がある場合です」

 また肺など発症部位が主治医の専門科ではない場合は、他科と連携して手術をする場合もある。

■負担が少ない腹腔鏡手術がメイン

 現在、手術の多くは腹腔鏡手術でおこなわれている。開腹せずに5~12ミリの小さな穴を3~4カ所ほど開け、カメラや器具を挿入しておこなう手術だ。おなかに炭酸ガスを注入し手術ができる空間を作り、挿入したカメラの映像をモニターで見ながら病巣をレーザーで焼いたり、切除をしたり、癒着部分の剥離をおこなう。モニターで見ることにより、拡大視による正確な手術ができる。

 腹腔鏡手術は開腹手術に比べ傷痕が小さいため目立たず、術後の痛みも少ない。また術後4日ほどで退院、社会復帰も術後1週間で可能など回復の早さもメリットだ。

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手術をするかどうかの選択はとても難しい