世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が入る建物=東京都渋谷区
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が入る建物=東京都渋谷区

「何か悪いことが起こると『教会をやめたからなのかな』と思ってしまうんです。末端の信者はまじめで優しい人が多かったから、『世間の人より、教会の人たちのほうが温かく迎え入れてくれるのでは』と、何度も戻ることを考えてしまいました」

 それでも、教団に戻ることなく踏みとどまった冠木さん。旧統一教会は今、宗教法人の「剥奪」まで叫ばれているが、頭をよぎるのは末端の信者のことだという。いま宗教法人が剥奪されたら、末端の信者は行き場を失う。その時のために、信者たちを救済する制度を国に検討してほしいと願っている。

「信者は生きる拠り所を奪われてしまうわけですから、極端な行動をする人が出てしまう可能性もあります。『国から迫害を受けている』と教会から誘導され、かつてのオウム真理教信者の、相手に怒りを向けるような凶行に出たり、自分を傷つけてしまったりする人も出るかもしれません。私はそのことをとても心配しています。あのオウムの事件があった時点で、統一教会にもメスを入れるべきだったのです。そのツケが回ってきて、今になって2世問題が深刻化しているのだと思います」

 安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者は、母親が旧統一教会に多額の献金をしたことで生活が苦しくなったと供述している。そんな環境の中、安倍元首相が旧統一教会の友好団体にビデオメッセージを送っている動画を目にして、「つながりがあると思った」ことが動機の一端とされる。同じ2世という立場からも、冠木さんは「安倍元首相とつながりがあったのかは検証すべきだ」と話す。

「亡くなってしまった安倍元首相に直接確かめることはできませんが、ビデオメッセージを出していたのだから、広告塔の役割を果たしていたと思われても仕方がありません。国葬の前に、実際はどうだったのかを政府に検証してほしいと思っています。ただ、すでに友好団体が安倍元首相の大規模な追悼式をやっているわけですから、教団側は関係性を認めたも同然だとは思います」

 27日に行われる国葬については、「国葬に反対している国民の意思だけではなく、旧統一教会に人生を狂わされた被害者たちの気持ちも置き去りにされているように感じます」と語った。

 2世も含めた被害者の救済に、政府は目を向ける必要がある。(AERA dot.編集部・岩下明日香)