(撮影/米倉昭仁)
(撮影/米倉昭仁)

「長年にわたりこれほど経済的、精神的に被害を生じさせてきた団体に対して『解散できない』というのは明らかにおかしい。それは広く国民のみなさまにおいてもご賛同いただけるものと考えております」

と、井筒大介弁護士は訴える。

 一方、川井康雄弁護士は解散請求について「現時点の材料で認められると、安易に考えているわけではない」と言う。

 いったい欠けているのは、何か?

 旧統一教会が宗教法人であることを隠した伝道活動の違法性が認められているが、「そのような活動が全国47都道府県で行われているという裏づけが必要です」(川井弁護士)。

 さらに重要なのは資金の流れの解明という。

「旧統一教会が毎年提出している財産目録や収支計算書が本当に実際の献金どおりに記載されているのか。そこに虚偽があれば宗教法人として罰則が科せられます。さらに関連会社などにおける事業収益で脱税が行われていないか、お金の流れを明らかにすることが大切です」(同)

 だが、当然のことながら、弁護士には捜査権がない。国が調査に乗り出さなければ証拠は集まらない。

 さらに山口弁護士は別なハードルを挙げる。

「旧統一教会に対して解散請求を不用意に行えば宗教界は総反発するでしょう。解散請求は決して宗教界全体におよぶものではなく、霊感商法的な行き過ぎた活動に対するものですと、きちんと説明して、ご理解いただく努力が必要だと思います」

現実的な消費者庁との連携

 宗教法人の所轄庁は文部科学大臣である。しかし、これまでの経験から「文科省を動かすのは極めて難しい」と山口弁護士は実感する。解散請求に向けて時間を費やしている間に国民の関心が薄れてしまえば、国は動かないだろう。そのため、全国弁連内部ではさまざまな議論が飛び交っているという。

 そんななか、山口弁護士が期待を寄せるのは、消費者庁のフットワークの良さだ。実際、同庁では「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」が開かれている。この検討会について川井弁護士は「議論は非常にありがたいことです」と述べ、消費者保護の観点から全国弁連内部で主に三つの法令について議論していることを明かした。消費者契約法(消契法)または特定商取引法(特商法)の改正、もしくは新法の立ち上げである。

 ただ、いずれの案にしても旧統一教会の霊感商法をどのように法律のなかに盛り込むかが大きな課題となる。

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日本はカルトの吹きだまり