小室哲哉
小室哲哉

 篠原涼子の楽曲『恋しさと せつなさと 心強さと』の新収録版『恋しさと せつなさと 心強さと 2023』が9月17日に配信リリースされて話題を呼んでいる。小室哲哉が作詞・作曲を務めるこの曲は、1994年公開の映画『ストリートファイターII MOVIE』の主題歌として「篠原涼子 with t.komuro」名義で発表されたものだ。

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 今回、歌も含めて新たに収録されて、2023年版として蘇ることになった。『恋しさと せつなさと 心強さと 2023』は、2023年発売予定のカプコンの対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』の日本イメージソングにも選ばれた。

 この曲が今なぜ話題になっているのかというと、篠原がいまだに女優として活躍していて、衰えていない歌声を聴かせてくれているから、というのももちろんある。しかし、やはり最も大きいのは、楽曲そのものが当時世間に与えた衝撃によるものだろう。

 同時代を生きてきた人たちは、サビから始まるあの曲の冒頭のフレーズを聴いただけで、当時の記憶が蘇ってくる。90年代中盤から後半にかけて、小室哲哉は日本の音楽シーンを席巻していた。自身がプロデュースした多数のアーティストの楽曲を毎月のようにヒットチャートの上位に送り込んでいた。そんな小室の曲は時代に寄り添った音楽として人々の心に残っている。

 小室が携わったアーティストの多くは今も影響力を保っている。ダンス・ボーカルユニットのTRFは現在も活動を続けているし、メンバーの一員であるDJ KOOはバラエティタレントとして再ブレークしている。安室奈美恵はいまや国民的なスターになったし、華原朋美も相変わらずのお騒がせタレントとして愛されている。

 彼らが今も人気を保っている最大の理由は、小室が手がけたヒット曲があるからだ。彼らの姿を見れば、同時代を生きてきた世代なら、するするといくつかの楽曲の印象的なフレーズが思い浮かんでくる。

 なぜ小室の残した楽曲は今も古くならないのか。それは、あの頃の彼の楽曲が、時代に迎合したものではなく、時代と寄り添うものだったからだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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楽曲に宿るパワーに衰えがない