そして、バイト先で彼氏と出会うことができた。

「彼のおかげで、世の中はこんなに自由なんだと、こんな服もある、化粧もある、おいしいお菓子もあるんだと知りました。夢のようでした。教会がいかに閉鎖的で、世の中から隔離されているかがよくわかりました」

 だが、前述したように、彼氏の存在がバレて、父親から暴力を振るわれる日々が続いた。

 高校を卒業すると、両親は旧統一教会のダミー会社で働かないかと打診してきた。それも霊感商法のような健康ビジネスをしている会社だったという。

 しかし、Hさんは断り、自分の力で契約社員の仕事を見つけてきた。それでも、週末には教会に行った。行かないと大げんかになるからだ。

 Hさんの弟も、

「教会の外にこんな自由があると知ってびっくりでした」

 と話す。

 あるとき2人は、脱会を決意する。

「決断した大きな理由は、合同結婚式です。昔は文鮮明氏が相対者(結婚相手)を決めていましたが、今は信者同士のマッチングアプリをこっそり開発して、それである程度選べる仕組みになっています。信者ばかりですから、環境は変わりません。両親がさかんにそのマッチングアプリへの登録を勧めてくるので、早く逃げないと合同結婚式に無理やり連れていかれてしまうと思ったんです」

 Hさんが続ける。

「実際、同じ教会の人が、韓国の合同結婚式に強引に参加させられて、帰国したらどこかに逃げてしまったのを知っていました。このままでは自分も弟も同じ運命をたどることになると。2人ともマッチングアプリに登録させられる前に脱会しようと行動に移しました」

 そこで2人は親戚を頼り、両親の元から離れ、周囲の協力で脱会できたという。

 冒頭でも触れたが、合同結婚式にマッチングアプリというのは驚きだ。そこで現役信者にマッチングアプリについて尋ねると、

「私が聞いたところでは、日本の信者の会社がマッチングアプリを開発し、信者専用に使っているそうです。顔写真や生年月日、所属教会など細かくデータを入力するんです。20歳を過ぎると祝福2世たちは、『早めに登録を』などと言われたりもします」

 と存在を認めていた。

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曲がった小指を見るたびに悔しさがこみ上げてくる