こだま・あきひこ 米国にて大手IT企業のモバイルアプリのプロダクトマネージャーを務める。著書に『人工知能は私たちを滅ぼすのか』等。慶應義塾大学博士(政策・メディア)
こだま・あきひこ 米国にて大手IT企業のモバイルアプリのプロダクトマネージャーを務める。著書に『人工知能は私たちを滅ぼすのか』等。慶應義塾大学博士(政策・メディア)

 しかし、普及率でいうと、ダウンロード数は、約4000万程度。目標の3分の2にとどまりました。一度インストールして、その後アンインストールした人や、複数回ダウンロードした人もいるでしょうから、実際の利用者はもっと少ないでしょう。

 陽性者の登録も、全陽性者の2%程度にとどまりました。

 第7波で日本の感染者数が世界で最多になったときもありました。

 これらのことを踏まえると、結果的に十分な効果を発揮できなかったと見ています。

――その要因は何でしょうか。

 初期の不具合が、国民にネガティブな印象を植えつけてしまったことが要因として大きいと思います。

 2020年8月ころのバージョンでは通知が多発するという問題がありました。また、アンドロイド用のアプリでは、20年9月から4カ月ものあいだ対象者に通知が送られていなかった不具合も発覚しました。

 ダウンロード数は2千万人くらいまでは順調に伸びていましたが、不具合がたびたび発覚してからは、伸びが鈍化しました。信頼のできないアプリという印象を持たれたのが要因と見ています。

 もう一つは、陽性者の登録件数が低かった点です。個人情報の観点から、陽性者登録は任意でした。ここの課題はボトルネックになると、私たちも考えていましたが、結果として昨年の8月くらいまで登録率は2%程度にとどまりました。

 ただ、昨年12月に、感染者情報把握システム「ハーシス」に登録された感染者にメールやSMSで自動でメッセージを送り、登録を促す改修が行われた結果、昨年末で4万件程度だった登録者数が今月9日時点で350万件にまで大きく増加しています。

――ココアの開発は委託先業者との契約金ベースで9割以上が再委託され、厚労省の規定「再委託比率は原則2分の1未満」を超えていました。この問題はどう見ていますか。

 下請け、孫請けの問題がよく指摘されますが、それ以前に考えないといけないのは、今回のアプリケーションの事業はかなり難しいものであったということです。

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委託先の事業者の問題は?