スイスからのツアー客(撮影/米倉昭仁)
スイスからのツアー客(撮影/米倉昭仁)

 1ドル=144円99銭。9月7日の円相場は、バブル崩壊後の金融危機のさなかだった1998年8月以来、約24年ぶりの安値となった。輸入原材料価格が高騰し、物価高をまねく「悪い円安」と言われる一方、円安を起爆剤になんとかコロナ禍で落ち込んだ業績を回復させたいと願う人たちもいる。歴史的な円安が、外国人観光客やインバウンド需要を望む人々に“福音”となっているのか、取材した。

【世界のビッグマック価格ランキング! 日本は何位?】

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 外国人観光客に人気の東京・浅草寺。

「どの商品も安くてすばらしいわ!」

 ハワイからやってきたツアー客の女性は日本の物価の安さについて声を上げ、「ベリー、ベリー」と繰り返した。

 女性はバッグを開けると、「免税」と書かれた透明なポリ袋を取り出した。購入したのは首や肩に貼るボディーケア用品。価格は8千円ほど。「安い」を連発するわりに買い物は意外とつつましい。

「訪日観光再開のニュースを聞いて、すぐにツアーに申し込んだよ」と、別の男性がうれしそうに声を上げる。

「ただ、入国にはビザが必要だし、スマホに『MySOS』(入国者健康居所確認アプリ)を登録するのが面倒でね」と愚痴をこぼすと、「まったくそのとおり」と、他の旅行者も口々に不満を訴えた。

 一方、スイスからのツアー客に尋ねると「まあ、物価は安いんですけどね」と、微妙だ。浅草で買ったのはお守りとお土産の定番「人形焼き」。聞くと、ツアー料金はかなり高額で、買い物の予算は削らざるを得ないという。航空券や燃油サーチャージの高騰が響いているようだ。

 外国人観光客にとって最近の円安は魅力的に映っているが、訪日は添乗員付き団体ツアーに限定されるなど、さまざまな要因で外国人観光客の数は伸び悩んでいる。

 ちなみにこの日、取材で浅草寺の雷門前に1時間ねばったが、見かけた外国人のほとんどは留学生やビジネスマンで、訪日観光ツアー客はわずか3組だった。

先進国では最安「ビッグマック」

 コロナ前の2019年、日本を訪れた外国人旅行者数は3188万人。日本文化の魅力もさることながら、日本はさまざまな品物やサービスの値段が安い「コストパフォーマンスが最高の国」だった。

 世界中に展開しているマクドナルドのハンバーガー「ビッグマック」の価格を比較すると、ニッポンの安さが浮かび上がる。

 英国の経済紙「The Economist」が毎年2回公表している「The Big Mac index」によると、54カ国中、スイスのビッグマックが一番高く6.71ドル(今年7月時点での米ドル換算)。円換算で925円にもなる。米国は6位で5.15ドル(710円)。ユーロ圏は10位で4.77ドル(657円)。さらにブラジル16位4.25ドル(586円)、スリランカ23位3.72ドル(513円)、中国31位3.56ドル(490円)と続く。

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日本はビッグマック指数で何位に?